Part2ポリファーマシーの現状と課題

医療法人社団悠翔会 悠翔会ホームクリニック知多武豊 院長
熊谷祐紀

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2024年12月公開

1.ポリファーマシーとは

ポリファーマシーについて厳密な定義はありませんが、5種類以上の常用薬があり、かつ有害事象がある状態とされることが多いです。つまり、多剤併用自体を悪としているわけでありません。

例えば、近年大きなパラダイムシフトを迎えた心不全領域では現在、心機能が保たれていない心不全患者の予後を延長させるために「Fantastic four」と呼ばれる4種類の内服薬が推奨されています1。たいていこういった方は、高血圧症や虚血性心疾患が背景にあり、利尿薬などが必要なことも多く、あっという間に多剤併用になってしまいます。
しかし、これは「必要な」多剤併用であり、悪ではないでしょう。もちろん、終末期に至り、それでも有害な事象があるときには、取捨選択して薬を減らす必要があります。

しかし現実として、薬物相互作用を有する処方の割合は加速度的に増えてきています。
少し古い報告ですが、スコットランドから、1995年から2010年の15年間での成人31万人の多剤併用に関するデータが出されています2。この15年間で、5種類以上の薬剤を処方された成人は20.8%と2倍に増加し、10種類以上もの薬を処方された成人は5.8%と3倍に増加していました。潜在的に重篤な薬物相互作用を有する割合は13%にも及び、2倍まで上昇しています。言うまでもなく、処方数が多いほどこの割合は上昇していきます。
1995年から2010年までの15年間でこの上昇率ですから、2024年現在と比較してみると、さらに大きなポリファーマシーの増加となることは想像に難くありません。

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