2020/12/18
高齢化に伴う呼吸機能の低下やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の増加などに伴い、酸素療法を必要とする患者が増えていると同時に、新型コロナウイルス感染後の後遺症としても、継続的に酸素投与が必要になる患者が多く、長期的な影響が懸念されている。
さらに、コロナ禍においては病床の確保も課題となっており、これまでは病院でみられていたような人工呼吸器管理をはじめとした高度な医療ケアを必要とする患者を、在宅の場に帰すケースも増えてきている。
このような状況で、病棟・在宅問わず酸素療法を必要とする患者のケアにあたる機会は今後も増えてくるものと考えられる。呼吸管理は患者の生命に直結するものであり、酸素ボンベ使用時の基本事項を今一度確認しておく必要があるだろう。
■必ず酸素ボンベのバルブ(元栓)が開いていることを確認する
酸素ボンベを使用する際、開栓を確認しないままで酸素ボンベを患者に接続し、患者のSpO2の低下によってはじめて元栓が閉まったままであることに気づいた事例が報告されている(日本医療機能評価機構 医療安全情報No.168より)。取り上げられていた事例は、検査に伴う搬送の際、中央配管から酸素ボンベに切り替えたときに生じていた。
このような切り替え時やボンベの交換の際は特に注意し、まずバルブ(元栓)を確認してから、圧力計や流量設定ダイヤルを確認することを徹底するのが重要である。
■酸素ボンベの残量の確認を確実に行う
酸素ボンベを使用中に残量がゼロになり、患者の呼吸状態に影響があった事例もたびたび報告されている(日本医療機能評価機構 医療安全情報No.48およびNo.146より)。これらの事例は、搬送時に酸素ボンベを使用していたケースのほかにも、検査中や待ち時間にも酸素ボンベでの酸素投与を続けていたケースも複数報告されている。
酸素ボンベの残量と、指示流用および酸素ボンベを使用する必要がある時間の確認を徹底し、酸素ボンベを使用する際は、引き継ぎ時、検査中、検査終了時などに残量を確認する。また、残量切れのリスクを減らすためにも、中央配管がある場所ではすみやかに中央配管からの酸素投与に切り替えることが重要である。
■酸素ボンベ使用時は、周囲2m以内に火気を持ち込まない
在宅酸素療法の際に、喫煙やストーブが原因で出火し、死亡や重症となった事例も継続的に報告されている。厚生労働省から公表されている事例は、平成15年から令和2年にかけて82件あり、うち77件が死亡事例である。また、原因の約4割を喫煙が占めている。
酸素療法が必要な患者にはCOPDが原因となっているものも多く、本人や家族の禁煙の徹底は必須である。厚生労働省では「在宅酸素療法時は、たばこ等の火気の取扱いにご注意下さい。」と題した啓発リーフレットも作成しており、患者・家族への周知に努めたい。
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上記はいずれも酸素ボンベの取扱いにおいては基本的な事項ではあるが、実際に患者の死亡や重篤化につながった事例がこれまでにも報告されてきており、酸素ボンベの取扱いに慣れていないナースだけではなく、日常的に酸素療法に携わっているナースも今一度確認しておきたいものである。
詳しくは、下記の各Webサイト参照
●独立行政法人医薬品医療機器総合機構
・医療安全情報No.168 酸素ボンベの開栓の未確認.
http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_168.pdf
・医療安全情報No.146 酸素残量の未確認.
http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_48.pdf
・医療安全情報No.146 酸素残量の確認不足(第2報).
http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_146.pdf
●厚生労働省
・在宅酸素療法における火気の取扱いについて.
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003m15_1.html
【関連ページ】
“息苦しさ”をもつ慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんに対する呼吸リハビリテーションの実際
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/2005/
基本から実践まで! 事例でよくわかる! 在宅酸素療法(HOT)の実際
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