2022/7/12
栄養剤の経鼻投与や胃瘻からの投与などに用いる経腸栄養分野の小口コネクタは、新しい規格(ISO80369-3)の製品への切り替えが進んでいる。この新規格の導入は、栄養剤と輸液など、異なる製品分野間での医療関連器具の誤接続防止を目的としたものであり、国際的に切り替えが進められている。
国内でも、誤接続防止および製品安定供給の観点より2019年11月から新規格コネクタの導入が始まり、2022年11月末までの完全移行をめざしていたが、この度、この移行措置が一部見直されることとなった。
厚生労働省から新たに出された通知(*1)では、「経腸栄養分野の小口径コネクタ製品の切替えに係る考え」として、以下が示されている。
・医療・介護時の事故防止と安定供給確保の観点から新規格製品への切替えを進めていくことが基本である。
・新規格製品の使用が困難であり、かつ旧規格製品を使用することについて、その目的に見合った医学的理由がある場合において、旧規格製品使用によるリスク等も含めたインフォームド・コンセントが行われ、旧規格製品の使用についての情報共有や記録が作成されている場合には、旧規格製品の使用を可能とする。
(*1)より、一部抜粋
この背景には、旧規格製品と新規格製品の構造・形状の違いに伴って見えてきた課題がある。新規格製品は旧規格製品と比較してコネクタの内径が狭く、またコネクタの形状がスクリュー状になっている。これらから生じる懸念点として、2020年12月に、日本重症心身障害学会など三団体が厚生労働省に提出した要望書(*2)では、
①捻りが必要なため、手首への負担増加の懸念
②標準規格製品のコネクタ部分の汚染の懸念
③薬剤や栄養剤の吸入に専用のチップやノズルが必要
といった、重症心身障害児・者の医療的ケアにおける新規格製品への課題が示され、旧規格製品の存続への希望が出されていた。
また、本邦ではミキサー食や半固形状栄養剤が広く普及していることも考慮が必要だ。これらの流動食・栄養剤は、粘度によって注入時の圧が旧規格に比べて新規格で増加することが指摘されている。介護者にとっては負担増となり、過度な注入圧がかかることでコネクタ部の破損や脱落も懸念されるため、現場では用手的な注入から加圧バッグに変更するなどの対応が行われている。
令和3年度厚生労働科学特別研究事業として行われた「経腸栄養分野の小口径コネクタ製品の切替えに係る課題把握及び対応策立案に向けた研究」からの提言(*3)によって、これらの課題や対応策についての検討が行われ、今回の見直しへとつながった。
旧規格製品の使用継続の対象となるケースについては、関係学会による明確化が望まれるとされており、本提言では、日本重症心身障害学会から出された、併存使用の候補となりうる病態についての意見も別添として添えられている。
今回の見直しに伴い、旧規格製品の出荷期限は当面の間設けないこととされ、販売の継続が見込まれる。必要に応じ旧規格製品の継続使用が可能となる利点の一方で、新旧の製品が現場に混在する状況が続くことによる混乱も予想される。病院と施設、かかりつけ先と緊急入院先などで異なる規格が導入されている場合の対応や、旧規格製品の継続使用を希望する患者・家族への十分な説明、スタッフ間での情報共有など、医療現場でのきめ細かな対応が求められる。
詳しくは、下記の各Webサイト参照
(*1)厚生労働省
「経腸栄養分野の小口径コネクタ製品の切替えに係る方針の一部見直しについて」(2022年5月20日).
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000941626.pdf
(*2)日本重症心身障害学会、日本重症心身障害福祉協会、全国重症心身障害児(者)を守る会
「経腸栄養分野での既存広口タイプ誤接続防止コネクタの存続に関する要望書」(2020年12月21日)
https://www.normanet.ne.jp/~ww100092/connector-youbou.pdf
(*3)医療機器・再生医療等製品安全対策部会安全対策調査会
「経腸栄養分野の小口径コネクタ製品の切替えに係る提言」(2022年5月10日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000936685.pdf
【関連ページ】
●胃瘻(PEG)トラブルを防いで、的確な栄養管理を行う-在宅での胃瘻管理もふまえて
https://www.almediaweb.jp/nutrition-top/nutrition-002/
●ナースの“食支援”はトータルケアにつながる
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/2002/
●「ディアケア プレミアム」
「胃瘻からの栄養剤投与:基本から最新器材の活用まで」(動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat03/theme002/index.html
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