2023/2/2
健康寿命の延伸に大切な要素のひとつとして「歯の健康」が挙げられる。
この度、東京都健康長寿医療センターの研究グループは、北海道に住む後期高齢者、約80万人分のレセプト情報を分析し、後期高齢者の歯科受診は肺炎や脳卒中発作、尿路感染症といった全身疾患による急性期の入院発生に対して予防効果があることを明らかにした。
歯の状態と全身疾患との関連は数多くの報告があり、歯周病が糖尿病や心疾患、脳卒中などの全身性の疾患と関連すること等が、広く知られるようになってきた。しかしながら、その因果関係についてはまだまだ検討が不十分であった。
今回、同研究グループでは、因果関係を推論できる“傾向スコアマッチング法”を用いて、歯科受診が全身疾患による急性期の入院発生を予防するかどうか、効果を検討した。
本研究では、2016年9月から2017年2月の間を“ベースライン期間”として設定している。この期間中に医療機関を受診した後期高齢者約75万人のなかから、期間中に入院・在宅医療利用・要介護認定などがあった者を除いた432,292人分のレセプトデータを分析対象とした。なお、このうち、期間中に歯科受診があった者は、34.6%にあたる149,639人であった。
対象となったレセプトデータから、傾向スコアマッチング法による絞り込みを行い、歯科受診のあった者となかった者で特性の近い148,032組が選ばれた。
ベースライン期間終了後、2年間の追跡を行ったところ、歯科受診がなかった者に比べ、歯科受診があった者では、肺炎・脳卒中発作・尿路感染症による入院の発生割合が低かったことが示された(歯科受診ありvs歯科受診なし;肺炎:4.9% vs 5.8%、脳卒中発作:2.1% vs 2.2%、尿路感染症:2.2% vs 2.5%)。
また、急性期の入院発生は、歯科受診がなかった場合に比べ、歯科受診があった場合では肺炎で15%、脳卒中発作で5%、尿路感染症で13%の抑制効果が認められた。
同研究グループは「本研究成果は、後期高齢者における歯科保険・歯科医療のあり方を検討する上で重要な知見」と述べており、今後は本研究で除外した要介護高齢者においても同様に効果が得られるかどうか、さらに、どのような診療行為(検査、処置、治療等)が急性期疾患の発症抑制と関係しているのか検討を続ける、と結んでいる。
近年では、口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを包括した「オーラルフレイル」という新たな考え方も広まりつつある。オーラルフレイルは健康と機能障害との中間にあたる可逆的な状態であり、早期の介入や定期的な歯科受診が重要とされている。
看護・介護者は、食事介助や口腔ケアの際などに、患者の食べにくさや口腔内環境の悪化に気づける機会も多いだろう。歯や舌をはじめとした口腔機能の低下や異常が全身状態にも影響することを意識し、早期に歯科受診へとつなげることを心がけたい。
詳しくは、東京都健康長寿医療センターWebサイト(2023年1月5日<プレスリリース>「後期高齢者の歯科受診は全身疾患による入院発生の予防効果あり」)参照
【関連ページ】
●ムリなく ムダなく できる! 口腔ケア
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●ナースが使いこなしたい!OHAT(オーハット)による口腔アセスメントの実際と口腔ケアの効果
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/2209/
●「ディアケア プレミアム」
口腔ケア 基本の“き”(実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat05/theme002/index.html
●「ディアケア プレミアム」
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