2024/2/20
東京都健康長寿医療センター研究所の研究グループは、糖尿病と食品摂取多様性の両方が高齢者のフレイルと関係すること、それらが組み合わさることによってフレイルの発生リスクが高くなることを、調査によって明らかにした。糖尿病患者の食事管理においては、特に高齢になるにつれ、厳格な食事制限だけではなく、フレイル予防にも着目した「多様性」のある食事が大切であることが示唆された。
従来の研究から、糖尿病の人はそうでない人よりもフレイルが多いことがわかっている。糖尿病患者でみられがちな低栄養、高血糖、低血糖などはフレイルの関連因子であり、また治療の一環として行われる食事管理(食事制限)についても、いきすぎてしまうとフレイルを引き起こす可能性がある。
特に高齢期における食事・栄養ケアにおいては、フレイル予防の観点も大切となる。しかしながら、高齢糖尿病患者におけるフレイル予防のための食生活については、これまで十分なエビデンスが構築されていなかった。
このような背景を受け、同研究グループでは、65歳以上の地域在住高齢者1,357名を対象とし、「糖尿病」「食事」そして「フレイル」との関係について、調査を行った。
食事の評価においては、簡便な評価指標である食品摂取の多様性スコア(Dietary Variety Score:DVS)が用いられた。DVSでは、食品を10の食品群に分類し、それぞれの摂取頻度を点数化することで、食品摂取の多様性を評価することができる。10点満点で評価され、点数が高いほど食品摂取の多様性があることがわかる。このDVSの得点は、フレイルの人では有意に低いことがわかっている。
DVSのスコアの高低と糖尿病の既往歴の有無のそれぞれの組み合わせにおいて、フレイルの割合を調査した。
その結果、フレイルの割合は、「糖尿病なし+DVSが高い」群で最も低い3.6%、「糖尿病あり+DVSが低い」群で最も高い12.2%となった。なお、「糖尿病なし+DVSが低い」群と、「糖尿病あり+DVSが高い」群は6.7%と同程度の割合となっている。
さらに、その他の指標(性別、年齢、体格指数、既往歴、飲酒習慣の影響など)を統計学的に調整したうえでフレイル発生のリスクを調べたところ、糖尿病がありDVSが低い—つまり食事の多様性が乏しいと、フレイルの発生リスクが高くなることもわかった。
これらの調査結果から、糖尿病高齢者のフレイルを予防するために、食事の多様性が重要である可能性が示唆された。同研究グループは、「食事多様性スコアを使用した栄養介入が、現在一般的に用いられている栄養指導と同じくらい有効であるかどうかを調べるために、これからも研究を続けていきます」と結んでいる。
フレイルは健康な状態と要介護状態の中間に位置する状態であり、高齢化が進む昨今、いかに適切な介入を行って健康状態を維持できるかは重要な課題である。高齢になるにつれ、食事量の減少や摂食嚥下機能の低下、運動量の低下など、フレイルリスクは高くなる。糖尿病があるとさらにフレイルリスクが上昇すること、食の多様性が予防のために重要であることを、医療・介護従事者は認識しておきたい。
詳しくは、東京都健康長寿医療センター研究所Webサイト(2024年1月5日<研究トピックス>「高齢糖尿病患者における食品摂取多様性とフレイルの関連」)参照
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