2024/6/25
早稲田大学とキユーピーの研究グループによると、食前に野菜を「噛んで食べる」ことによって、食後のインスリン、および、インスリン分泌促進ホルモンであるインクレチンの分泌が刺激されることが明らかになったという。
食後高血糖は、糖尿病予備群の可能性や動脈硬化の危険因子として注意すべき状態だ。これまでにも、食後の血糖値上昇を抑制する食品や食事法に関する研究が数多く行われており、その1つとして「咀嚼、噛むこと」が挙げられる。
近年、いわゆる「ベジタブルファースト(食事のはじめに野菜を摂取する)」の食事法は、食後血糖値の上昇を押さえる働きがあることが一般にも知られてきている。同研究グループは、食前に固形の野菜を咀嚼して摂取することが食後の糖代謝に及ぼす影響を検証した。
本研究では、19人の健康な成人男性を以下の2条件に分け、交差試験を行った。
・咀嚼条件:千切りキャベツを咀嚼して食べ、その後ゼリー飲料を摂取
・非咀嚼条件:キャベツ粉砕物を食べ、その後ゼリー飲料を摂取
食べ始め(0分)と、食事から15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分後に採血を行い、血糖、インスリン、インクレチン(GIP、GLP-1)の血中濃度を測定した。
その結果、試験全体(180分)インスリンおよびGIPの上昇曲線下面積(時間経過にともなう初期値からの増加量)が、咀嚼条件で高値を示すことが確認された。また、GLP-1の血中の経時変化を解析したところ、咀嚼条件で食事開始45分から90分の時間帯で高値を示すことが確認された。
血糖値およびGLP-1の試験全体(180分)における上昇曲線下面積は、明らかな差は確認されなかった。
インスリンおよびインクレチン分泌が促進されたにもかかわらず食後血糖値に差が認められなかったのは、試験食として用いたゼリー飲料が、一般的な食事とは異なることが理由のひとつとして考えられる。
加齢に伴いインスリンの分泌が低下するため、野菜を「噛んで食べること」でインスリンの分泌が刺激される可能性が示唆された若年者を対象とした本研究の結果は大変意義深いと言える。近年では固い食べ物が敬遠され、やわらかい食品が好まれる傾向にある。ふだんの生活のなかで「噛む」ことを意識した実践が期待される。
同研究グループは、今後、日常生活の中で「ゆっくりとよく噛んで食べる」ことを実践することで、食事の摂取量や体重にも影響があるか否かについても調査していきたいと結んでいる。
加齢に伴い口腔機能の低下、「オーラルフレイル」がみられることも、近年では広く知られてきている。しっかり噛んで食べることができる口腔機能を保つためには、日頃からの適切な口腔ケアと、摂食嚥下機能の評価、機能維持のための訓練が重要だ。いずれも看護師が果たす役割が大きい分野であり、積極的にかかわられたい。
詳しくは、下記の早稲田大学Webサイトを参照
「野菜を「噛む」ことが血糖値変動のメカニズムに影響— 咀嚼が食後のインスリン分泌を促すことを確認 —」
https://www.waseda.jp/inst/research/news/77249
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