2024/9/11
高齢者は、加齢による生理的な変化が生じることや、複数の基礎疾患を抱えている方が多いことから、内服薬が増える傾向がある。それに伴い、薬剤の作用・副作用による有害事象リスクや、飲み忘れ・飲み間違いなどの服薬アドヒアランスの低下リスクなど、さまざまな問題が生じることから、このような「ポリファーマシー」への対策が病院、地域問わず求められている。
厚生労働省では、平成29(2017)年4月に「高齢者医薬品適正使用検討会」を設置し、高齢者の薬物療法の安全確保に必要な事項の調査・検討を進めてきた。これまでに、「高齢者の医薬品適正使用の指針」や、「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」(以下、病院編)などが取りまとめられてきている。令和6(2024)年6月の検討会での議論を経て、これらの改訂版に加え、新たに地域全体でのポリファーマシー対策の実現に向けて、「地域における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」(以下、地域編)が取りまとめられた。
病院が主導となって進める対策と、地域の診療所と薬局、あるいは市区町村単位で行政や介護、学識経験者などの主体が会議体などを通じて連携して行う対策、双方が適切に機能することで、より効果的なポリファーマシー対策につながると考えられる。
本書は、表題のとおり「始め方」と「進め方」の2章に分けられている。
始め方のほうでは、患者/家族説明に使用できる具体的な資材や、ポリファーマシー対策のためのしくみやツールの紹介、始めるにあたって課題となる点(例:人員不足、服用薬の一元的把握が困難、かかりつけ医へのフィードバック体制 など)への対応策がまとめられている。
進め方のほうでは、ポリファーマシーの概念にはじまり、運営ルールの構築(病院編)や自治体とのかかわり方(地域編)、地域包括ケアシステムとの連携、デジタル技術の活用、費用対策など、対策を進めるうえでの手順が具体的に解説されている。また、地域編では、場面ごとの実施例もまとめられており、外来・在宅医療患者、退院患者、介護老人保健施設など、対象や働く場に合った例をみることができる。
さらに、本書が掲載されている厚生労働省のWebサイトでは、持参薬評価表や服薬情報提供書、薬剤管理サマリーなど、ポリファーマシー対策に活用できるいくつかの様式もすぐ使用できる形で掲載しているので、ぜひ活用されたい。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイトを参照
「「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」及び 「地域における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」について」の通知発出について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41542.html
【関連ページ】
●看護師の視点からみた「高齢者の薬」
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/2103/
●こんなこと知りたかった! 在宅で行う看護ケアの“コツ”と“わざ“
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