2025/1/7
2024年11月21日、慶應義塾大学病院メモリーセンター長の伊東大介特任教授らの研究チームは、アルツハイマー病を簡便かつ効率的にスクリーニングする新しい方法を発表した。この方法は、認知症患者の臨床的特徴「head-turning sign(HTS)」と、簡単な質問セット「Neucop-Q」を用いて、脳内のアルツハイマー病理を予測するものである。
●HTS:問診時の観察による簡便な診断
HTSとは認知症患者に特徴的な「医師の質問に直接答えようとせず、となりにいる家族など同伴者のほうを振り返って手助けを求める」行動に着目した手法である。振り返り動作の有無によって評価を行う。
●Neucop-Q:簡単な質問セットによる診断
「病識:consciousness(C)、楽しみ:pleasure(P)、ニュース:news(N)」についてたずね、回答の内容によって評価を行う。
-病識:現在、困っていることはありますか?
-楽しみ:現在、楽しみはありますか?
-ニュース:最近(3か月以内)気になるニュースを挙げてください
研究の結果、「HTS陽性、病識が欠如、ニュースの記憶なし」の対象者は、アルツハイマー病およびアルツハイマー病による軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)が強く疑われること、また「楽しみなし」の対象者は非アルツハイマー病認知症における関連性を有していることがわかった。
これまでのアルツハイマー病の診断は、MRIやPETといった高額な画像診断や詳細な認知機能検査が必要とされていた。これらは専門医の診断が不可欠で、侵襲性の高さや経済的な負担の大きさといった理由から、容易に行えるものではなく、早期発見・早期治療への介入を妨げる要因となっていた。
同研究チームは、HTSとNeucop-Qは、評価法の簡便さから、介護施設や家庭でも実施可能であり、「アルツハイマー病の強力な第一選択スクリーニングとして役立つ可能性があることが示された」と述べる。
アルツハイマー病の治療薬として注目される「レカネマブ」(2023年承認)は、MCIと軽症アルツハイマー病のみに適応が限定されており、より早期段階での診断が不可欠である。今回、同研究チームが確立した新しい手法によって、適切なタイミングで治療が開始され、アルツハイマー病の進行を抑えることにより、患者やその家族のQOL(生活の質)向上への貢献が期待される。
詳しくは、下記慶應義塾大学のWebサイトを参照
簡便な認知症サインと質問セットによるアルツハイマー病のスクリーニング法の確立-レカネマブの適応判断にも利用可能-
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2024/11/21/28-163335/
【論文情報】
この研究成果は、2024年11月21日に国際医学雑誌「Alzheimer's Research & Therapy」(オンライン版)に掲載された。
Daté Y,Bun S,Takahata K,et al:Can the clinical sign “head-turning sign” and simple questions in “Neucop-Q” predict amyloid β pathology? Alzheimers Res Ther 2024;16(1):250.
DOI: 10.1186/s13195-024-01605-6
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