2025/1/21
“POCUS(point-of-care ultrasound;ポイントオブケアエコー)”という言葉を聞いたことがあるだろうか。超音波検査技師などの専門職が行う精査目的のエコー検査と異なり、POCUSはベッドサイドなどで医療者が身体診察の延長として行うエコー検査のことを指す。エコーの小型化に伴い、必要な場所で・必要なときに、すぐにポケットエコーを用いてさまざまな身体状態の把握ができるようになってきた。特に、医療者や医療設備が限られる在宅医療の現場や離島・僻地などでは、医療者がPOCUSを活用することでもたらされる効果は大きいと期待されている。
GEヘルスケアでは、2024年8月から3か月間、在宅医が訪問診療または往診をしたケース225事例を対象に、在宅でのポケットエコーの活用実態を調査した。分析の結果、ポケットエコーを用いた検査が診断/治療上有用であったとの回答が、調査した事例の100%で得られたと発表した。
ポケットエコーを活用することで「診察でき、治療できた」事例が、全体の約半数の44.9%にのぼり、在宅で診察が完結したことがわかる。また、32.9%の事例では、「診断はできなかったが救急疾患を除外できた」とされ、POCUSが緊急性の低い救急搬送の防止に寄与していることも示唆された。
さらに本調査では、エコーを使用した目的や検査部位等の実態に加え、ポケットエコーがなく在宅で医療が完結できない場合や救急搬送が発生した場合にかかるコストの推計値についても可視化している。
本結果を受け、調査元は、「特に患者さんの急変時におけるエコーの対応力の高さが確認され、在宅医療においてポケットエコーの利用が普及することが救急医療への負担低減、そして医療費の削減につながることへの示唆が得られました」と述べている。
本調査は在宅医によるポケットエコーの活用事例についての報告であるが、訪問看護の現場にもPOCUSは広く普及しつつある。療養生活援助として用途が多いのが、排泄トラブルのアセスメントへのポケットエコーの活用であろう。
膀胱内尿量の測定や、膀胱結石・前立腺肥大などの形態観察、膀胱留置カテーテルの位置確認などは、下部尿路機能の評価や排尿トラブル時の原因検索に大変役立つ。「排尿自立支援加算」「外来排尿自立指導料」の算定においては、チームの構成員の看護師の条件の1つに、“エコーを用いた残尿測定等を含む内容の研修を受けていること”が含まれている。
また、在宅でよくみられる便秘のアセスメントにも、エコーによるアセスメントが有用だ。便の貯留部位や性状、量などを観察することで、腸閉塞の疑いを評価したり、状態に応じた適切な排便ケアへとつながる。
排泄のトラブルは療養者にとって苦痛や不快感を伴うものであり、理由がわからない、見通しが立たないなどの状況が続くと、さらなる不安・悪化につながりかねない。エコーで撮った画像をリアルタイムに療養者や家族に見てもらい、状況や見通し、必要なケアなどを視覚的にわかりやすく説明することで、タイムリーなケアに加え、療養者や家族の理解や安心感にもつながることが期待できる。さらに、エコー画像の医療者間での共有も容易であるため、医師や専門職の指示を仰ぐうえでも有益な情報となる。
ほかにも嚥下や褥瘡の評価、静脈穿刺やストーマサイトマーキング部位の確認など、POCUSの活用範囲は幅広い。看護ケアの場にますますPOCUSが広がることで、よりタイムリーで的確なアセスメントへとつながることが期待されている。
研究の結果、「HTS陽性、病識が欠如、ニュースの記憶なし」の対象者は、アルツハイマー病およびアルツハイマー病による軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)が強く疑われること、また「楽しみなし」の対象者は非アルツハイマー病認知症における関連性を有していることがわかった。
詳しくは、下記、GEヘルスケア・ジャパンのプレスリリースを参照
・GEヘルスケア・ジャパン ポケットエコーで実現するこれからの在宅医療について調査を実施—ポケットエコーのコストインパクトから考察し、現役在宅医が挙げる課題とは—(2024年12月3日)
https://www.gehealthcare.co.jp/event-and-news/news-and-initiatives/2024/press20
【関連記事】
●看護師(ナース)が使いこなすポータブルエコー:どんな場面でどう使うか
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/2212/
●看護師によるエコーのススメ
https://www.almediaweb.jp/expert/ad/ac2109_01.html
【参考文献】
・真田弘美,一般社団法人次世代看護教育研究所監修,松本勝,野村岳志,河本敦夫編著:ポケットエコーで看護力アップ ポイントオブケア 看護エコー.照林社,東京,2024.
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