2018/7/18
入院時にナースが行う褥瘡アセスメントの危険因子の1つに加わったのが「スキン-テア」だ。そのトピックについては当ニュースでも既報し(診療報酬改定で、褥瘡に関する危険因子の評価に「スキン-テア」が加わった)、本サイトの特集でも取り上げた(ますます注目を集める「スキン-テア」 褥瘡の危険因子となったことで一般ナースもアセスメントが必要に)。褥瘡対策は入院基本料の要件の1つであるため、「スキン-テア」のアセスメントは一般ナースが行わなければならなくなったことから、俄然注目を集めているようだ。そんな動きにいち早く応えて、看護専門雑誌『エキスパートナース』では、2018年7月号で「スキン-テア」の特集を組んでいる。
巻頭の真田弘美教授(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 老年看護学/創傷看護学分野)とオーストラリアのシルバーチェーン&カーティン大学のケリリン・カービル教授との対談には、最新情報が盛り込まれていて興味深い。
今回の診療報酬改定で新たに組み込まれた褥瘡の危険因子の項目は、「皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)」だ。このうち、「保有」については、「スキン-テア」と紛らわしい創傷である、褥瘡やIAD(失禁関連皮膚炎)、MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)との鑑別が必要になるが、難しいのは「既往」の見方である。カービル教授は、「スキン-テアがあったかどうか、まず患者・家族に聞くことが重要」としたうえで、転倒のインシデントがあった場合には傷の有無を確認することが必要と答えている。さらに、日本創傷・オストミー・失禁管理学会が示している「白い線状」あるいは「白い星状」の瘢痕があった場合についてたずねた真田教授に対して、「スキン-テアの既往としてそれらの瘢痕の有無を目印にすることは非常にいい」と答えている。
また、皮膚の創傷を「外傷(trauma)」と「湿潤(moisture)」という原因によって分類し、わが国で「テープテア」とされているものはアメリカでは「MARSI(medical adhesive related skin injury:マーシー)と呼んで「スキン-テア」と別の項目立てにしていることを解説している(下表)。
外傷(Trauma) | 湿潤(Moisture) |
---|---|
=MARSI(Medical Adhesive Related Skin Injury)(医療用接着剤関連皮膚損傷) |
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さらに、「スキン-テア」や「ドライスキン」には「保湿」がとても重要であること、1日2回の保湿クリームの塗布の有効性を強調しながらも、「保湿剤を塗りすぎても効果がないという結果も出ている。保湿効果が高すぎて水分が多すぎると、摩擦係数が高くなってしまうのではないか」と警鐘を鳴らしている。スキンケアを行うナースにとっては関心の高い内容だ。
同特集の中で、スキン-テアの治療法として、「とにかく皮弁はできるだけ戻して」と訴えているのは皮膚科医の加納宏行准教授(岐阜大学大学院医学系研究科)である。加納氏は、「スキン-テア」は皮膚が真皮レベルで剥離したものであるため表皮が再生しない限り治らないと強調しており、剥離した皮膚を戻してそれが生着すれば、再生というステップが不要になると説明している。「数日経過して固まってしまった皮弁でも生きているため、とにかく元に戻してほしい。受傷後数日以内なら十分に生着する可能性がある」と述べている。「スキン-テア」が発生したときには、積極的に皮膚科・形成外科と連携をとることが大切だ。
詳しくは、下記の株式会社照林社Webサイト参照
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