2020/10/1
日本褥瘡学会では、褥瘡状態アセスメントツールDESIGN-R®の各項目を見直したうえ、DESIGN-R®改定に向けての取り組みを進めている。2020年9月11日、12日に開催された第22回日本褥瘡学会学術集会(会長:寺師浩人/神戸大学大学院医学研究科形成外科学教授)は、すべてオンライン開催に切り替えて行われたが、会期中にコンセンサスシンポジウムとして、「改定DESIGN-R®2020」(仮称)について討議された。
改定のポイントとなっているのは2点で、D(Depth:深さ)の項目にどう“DTI(Deep Tissue Injury:深部損傷褥瘡)”を反映させるかという点と、I(Inflammation/Infection:炎症/感染)の項目にどう“クリティカルコロナイゼーション(Critical Colonization:臨界的定着)”を取り入れるかである。
そもそもDESIGNは、2002年の褥瘡対策未実施減算の際に必須とされた褥瘡対策チームの各職種が、褥瘡状態を評価する際の共通言語として策定され進化してきたものだ。現在の「DESIGN-R®」は点数の重みづけができるように改定されて2013年に確定したもので、合計点には「D(深さ)」は加えないことになっている。
現在のDESIGN-R®では、D(深さ)においては、「DU」として「深さ判定が不能の場合」とされている。しかし、DTIの場合に付けるべき項目がなく、すべて「DU」とせざるを得ないことから、今回の見直しとなった。改定案では「D5」(関節腔、体腔に至る損傷)と「DU」(旧:深さ判定が不能の場合、新:壊死組織で覆われ深さの判定が不能)の間に新たに、「DDTI」(深部損傷褥瘡(DTI)疑い)を加えることが提案されている。
また、I(Inflammation/Infection:炎症/感染)においては、「I3」を2項目にして、従来の「I3」はそのままに「I3C」(臨界的定着疑い(創面にぬめりがあり、滲出液が多い。肉芽があれば、浮腫性で脆弱など))の項目を加えることが提案されている。いずれの場合も点数は「3点」となる。「I3C」の「C」がC(クリティカルコロナイゼーション)のことである。
今回の改定は「褥瘡学」の進歩によって広く認識されるようになったDTIやクリティカルコロナイゼーションを褥瘡状態評価ツールDESIGN-R®に取り入れようという試みで、臨床的な意味合いから、とても意義深いものと思われる。それは、創傷治癒遅延の要因追及のための臨床判断を促すために有効だと考えられるためである。同時に、エコー技術が比較的容易に行える身近なものになるなど、デバイスを用いたアセスメント技術の科学的な進化が後押ししたものともいえるだろう。ただ、これを現場で使うとなると、DTIやクリティカルコロナイゼーションの“判断指標”の明確化と、その共有が必須だと思われる。そのため、同学会では、「改定DESIGN-R®2020」についてのパブリックコメントを踏まえて、2020年末を目途に、改定DESIGN-R2020の解説本である「コンセンサス・ドキュメント」を策定していく予定という。
詳しくは、下記の日本褥瘡学会Webサイト参照
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褥瘡アセスメントに必須!改定された「DESIGN-R®2020」ここだけは知っておきたいポイント
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/2104/
褥瘡状態評価スケールDESIGN-R®改定版「DESIGN-R®2020」公表 「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」と「臨界的定着疑い」が追加
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