Part4摂食嚥下のアセスメントの実際

群馬パース大学 看護実践教育センター
認定看護師教育課程 専任教員
板垣 卓美

一部会員限定
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2022年7月公開

1.咳反射を確認する

看護記録を読んでいると、「むせなし、誤嚥なし」、または「むせあり、誤嚥あり」などと記載されていることがよくあります。これは正しいのでしょうか。

むせというのは、嚥下に同期した咳のことです。誤嚥しかけた、あるいは誤嚥してしまったときに発動される、生体が備え持つ大切な防御機構です。むせが生じるような現象が起こることは問題ですが、むせによって生体が誤嚥から守られるのであれば、むせが生じることはよいことと考えることもできます。最も問題になるのは、誤嚥しかけているのにむせが生じずに、そのまま誤嚥してしまうことです。これを「不顕性誤嚥」(むせという形で誤嚥が顕在化せずに、誰にも気づかれず静かに誤嚥していること)といいます。

実際に誤嚥が生じたのかどうか、むせがなければ、第三者が毎回正確に確認することは困難です。もっと言えば、当人ですらよくわからないかも知れません。つまり、むせが生じない状態というのは、ベスト(誤嚥を生じるような現象が起こっていない)あるいはワースト(誤嚥が生じるような現象が起こっているのにむせが生じないので、誤嚥性肺炎のリスクが高い)のどちらかということです。

誤嚥について極論すると、例え誤嚥しても、むせによってすぐに(つまり、むせの反射が正常に)、かつ完全に(つまり、むせの強さが正常に)喀出されるなら、生体は誤嚥から守られるので安心できます。そのため、むせが正常であることが評価できれば、摂食訓練を進める際にもむせを指標にすることができます。そうなってはじめて「むせなし、誤嚥なし」と考えることができます。

逆にむせが低下している人は、仮に絶食や経管栄養であっても唾液誤嚥のリスクが高い状態になり、誤嚥を防ぐには詳細な評価と綿密な対策が必要となります。そのため、リスク管理としても、まずむせの能力を評価しておくことがとても大切になります。むせの評価とは、咳の評価と同義です。

直接訓練の開始基準ともなる咳の評価ですが、臨床では割と主観に頼った評価がなされている印象を受けます。咳の反射性、咳の強さを両方とも客観的に評価することが、咳の有効性を評価する上でとても大切です。

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