Part7学会分類2021をどう活用するか

群馬パース大学 看護実践教育センター
認定看護師教育課程 専任教員
板垣 卓美

一部会員限定
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2022年7月公開

1.学会分類2021の概要

嚥下調整食について、我が国においては長らく統一された基準が存在せず、各施設や団体によるさまざまな名称や基準が乱立した状態でした。しかし、日本摂食嚥下リハビリテーション学会によって「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」が示され、以降は国内の病院・施設・在宅医療および福祉関係者の共通言語として定着しつつあります。そして、その改訂版として2021年に「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(以下、「学会分類2021」)」が示されました。学会分類2021は、図1のように、「学会分類2021(食事)」と「学会分類2021(とろみ)」の2種類に分かれています。

図1日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021
図1 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021

学会分類2021は、概説・総論、学会分類2021(食事)、学会分類2021(とろみ)から成り、それぞれの分類には早見表を作成した。
本表は学会分類2021(食事)の早見表である.本表を使用するにあたっては必ず「嚥下調整食学会分類2021」の本文を熟読されたい.なお,本表中の【 】表示は,本文中の該当箇所を指す。
*上記0tの「中間のとろみ・濃いとろみ」については,学会分類2021(とろみ)を参照されたい.
本表に該当する食事において、汁物を含む水分には原則とろみを付ける。【I-9項】
ただし、個別に水分の嚥下評価を行ってとろみ付けが不要と判断された場合には、その原則は解除できる。
他の分類との対応については、学会分類2021との整合性や相互の対応が完全に一致するわけではない。【I-7項】
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会:日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021.日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌 2021;25(2):139.より引用

学会分類2021(とろみ)の早見表

学会分類2021は、概説・総論,学会分類2021(食事)、学会分類2021(とろみ)から成り、それぞれの分類には早見表を作成した.本表は学会分類2021(とろみ)の早見表である.本表を使用するにあたっては必ず「嚥下調整食学会分類2021」の本文を熟読されたい。なお、本表中の【 】表示は,本文中の該当箇所を指す。
粘度:コーンプレート型回転粘度計を用い、測定温度20℃、ずり速度50s-1における1分後の粘度測定結果【Ⅲ-5項】。
LST値:ラインスプレッドテスト用プラスチック測定板を用いて内径30mmの金属製リングに試料を20mL注入し、30秒後にリングを持ち上げ、30秒後に試料の広がり距離を6点測定し、その平均値をLST値とする【Ⅲ-6項】。
注1:LST 値と粘度は完全には相関しない。そのため、特に境界値付近においては注意が必要である。
注2:ニュートン流体ではLST値が高く出る傾向があるため注意が必要である。
注3:10mLのシリンジ筒を用い、粘度測定したい液体を10mLまで入れ、10秒間自然落下させた後のシリンジ内の残留量である。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会:日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021.日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌 2021;25(2):144.より引用

2.学会分類2021の読み方

学会分類2021(食事)は、5段階に分かれた嚥下調整食の基準です。
学会分類2021の段階は「コード0j」「コード0t」「コード1j」「コード2―1」「コード2―2」「コード3」「コード4」より成り立っています。段階がコード化されているのは、ピューレやペースト等の名称から想起する食形態は個人ごとに異なるので、共通認識が得られにくいためです。
各段階において「名称」「形態」「目的・特色」「主食の例」「必要な咀嚼能力」「他の分類との対応」が明記されています。

「コード」と「名称」に一部含まれる“j”は「ゼリー状」を、“t”は「とろみ状」を示しています。同じ段階の中にjとtが分かれている理由としては、経口摂取を開始する場合にすべての人にゼリー状の食品が適しているわけではないため、経口摂取を開始する場合にゼリー状ととろみ状のいずれかを治療者が選択できるようになっているためです。

「形態」と「主食の例」には、おのおのの段階に適応する具体的な食形態が明記されています。「目的・特色」には、おのおのの段階の使用場面や、必要となる咀嚼~嚥下までの能力が一部記載されています。「必要な咀嚼能力」には、その名称どおり、それぞれの段階で必要となる咀嚼能力が記載されています。これら各段階の各項目を理解することで、その人が今どういった段階の食事(食品)を摂取することが望ましいのか、当たりをつけることが可能になります。

これらの段階がすべての人にとって難易度と一致するわけではありません。その人にとってどういった段階の食形態を摂取するか、その時々で検討されるのが理想です。しかし、基本的にはある段階の食事を十分に摂取できた場合に次の段階に上がるという、基本的な手法による食上げを行うことも可能です。

また、その人が摂取するすべての食事がある段階の中に納まっている必要は必ずしもありません。後述しますが、咽頭残留除去に向けたゼリーの摂取を行いたい場合には、どの段階の食事を摂取していてもゼリーを摂取することに問題はありません。一品ずつ食上げしていく過程で、前の段階の食事と今の段階の食事が混ざることも問題ありません。

学会分類2021(とろみ)には、とろみ付き液体の濃度の統一化を図るために、「中間のとろみ」「薄いとろみ」「濃いとろみ」の3段階に区分されたとろみ濃度ごとの性状が詳細に表記されています。また、本来とろみの濃度を測定するためには粘度計という大掛かりな装置が必要ですが、粘度計のない施設でも測定可能なラインスプレッドテスト(LST)やシリンジ法という、粘度と相関があって比較的簡便な測定方法が記載されています。

食事の段階に関する定義にも言えることですが、とろみ付き液体の濃度の定義が施設によって異なることには大きな問題があります。例えば学会分類2021の「中間のとろみ」くらいの濃度を「薄いとろみ」として提供している病院の患者さんが転院する際、サマリーには「薄いとろみ」を摂取されていた旨が記載されると思われます。とろみは濃度が上がればより安全ではありません。とろみの濃度が上がるごとに付着性が増し、咽頭残留の可能性が上がってしまうことなどがその理由です。その人にとって適正なとろみ濃度がどの場所でも提供されるように、とろみ濃度の定義が全国で統一されることが理想です。とろみ濃度をサマリーに記載する場合は「中間のとろみ(学会分類2021)」などと記載するようにすると、受け入れ側の施設のスタッフとも共通理解がすすみやすくなるでしょう。

学会分類2021には、(食事)(とろみ)のそれぞれに早見表が準備されていますが、実際に活用する際は詳細な解説をご一読されることをお勧めいたします。早見表とより詳細な解説は「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」でweb検索するか、https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdfからアクセスしてください。

3.規格が統一された嚥下調整食

上述したように、学会分類2021では、嚥下食ピラミッドやユニバーサルデザインフード、えん下困難者用食品許可基準など、既存のさまざまな嚥下調整食の分類との対応も示されています。そのため、それらの分類を活用してきた人にも扱いやすい基準となっています。

段階的な食上げを図る場合にどの段階からスタートするか、また次の段階に食上げするためにどういった咀嚼嚥下能力が必要となるかについては、各段階に必要な能力の目安が示されているため、そちらを参照しながら検討することができます。

これら規格が統一された嚥下調整食は、段階的な摂食訓練を進める際の指標としてとても有効です。しかし、さまざまな条件に配慮された安全な物性とは離れたところにある食品ほどおいしいものが多い面もあるので、最終的には嚥下調整食から卒業できることが理想でしょう。

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