Part6そもそも嚥下調整食とは何か

ここでは嚥下調整食（ここでは「嚥下食」ではなく、日本摂食嚥下リハビリテーション学会で採用されている「嚥下調整食」を用います）について述べる前に、まず“きざみ”について取り上げます。

きざみ食は、いわゆる嚥下調整食ではありません。それどころか咀嚼や嚥下の難易度を高めてしまうため、咀嚼嚥下困難食であるとすら言えるものです。このことを理解するには、体験するのが早道です。簡単な実験方法を示しますので、ぜひ皆さんも行ってみてください。

ピーナッツなどの硬くて水分を吸収しにくい食物を数粒ずつ、そのまま食べるパターンときざみ食にして食べるパターンで準備します。次に、それぞれを口に入れて、摂食嚥下までに要する咀嚼の回数をカウントしてみてください。ほとんどの方が、きざみ食にしたピーナッツのほうが咀嚼の回数が多くなり、中には倍近い咀嚼回数の違いを体感される方もいるはずです。これは、他の多くの食品でも同様の結果を示します。なぜこのような現象が生じるのでしょうか。