ナースができる!「食べられる」機能の見極めと摂食嚥下ケア
:嚥下調整食を使った食事摂取の進め方
群馬パース大学 看護実践教育センター
認定看護師教育課程 専任教員
板垣 卓美
2022年7月公開
リハビリテーションには、その練習が目的の動作を向上させるために果たす効果を指す「転移性」という概念があります。剛速球を投げたいピッチャーが腕の筋トレを行うことは必要かもしれませんが、どんなに腕の筋肉が発達しても、ピッチング自体を練習しないとけっして速い球が投げられるようにはなりません。目的の動作を獲得するためには、その動作に必要なパーツを鍛えることに意義はありますが、最終的には目的の動作そのものを行うことが、その動作を獲得するために最も効果的な訓練になります。つまり、咀嚼するには咀嚼自体を行うことが、嚥下するには嚥下自体を行うことが最も転移性の高い訓練ということになります。
間接訓練とは、「飲食物を用いない摂食嚥下の訓練」を指します。上述した腕の筋トレの例えがこれに該当します。飲食物を用いないために誤嚥のリスクは低いですが、転移性は直接訓練に及びません。
直接訓練は、「飲食物を用いる摂食嚥下の訓練」を指します。上述したピッチング練習の例えがこれに該当します。飲食物を用いて実際に嚥下するため、誤嚥のリスクは高まりますが、転移性の面から訓練効果は高いと言えます。直接訓練としては、食形態の調整、一口量や食器具など食べ方の調整、姿勢調整、複数回嚥下など飲み込み方の工夫(「代償嚥下法」といいます)」などが挙げられます。これらについては他項で触れていますので、ここでは主に間接訓練について取り上げます。
間接訓練と直接訓練のバランスをいかに取っていくかが大切であり、直接訓練のリスクを鑑みながら、どこかで直接訓練を行っていく必要があります。そのために、間接訓練と直接訓練の開始基準を押さえましょう。
間接訓練と直接訓練の開始基準を表1に示します。
表1 間接訓練と直接訓練の開始基準
次の項から、主な間接訓練である、①喉頭挙上訓練、②舌の筋力増強訓練、③咀嚼訓練(ガーゼガム訓練)について具体的に解説していきましょう。
会員登録をすれば、
Part2~Part9も読めます!
ナースができる!
「食べられる」機能の見極めと摂食嚥下ケア
:嚥下調整食を使った食事摂取の進め方
限定コンテンツ
実践のコツや記事などの
「限定コンテンツ」が見られる!
資料ダウンロード(PDF)
一部の記事で勉強会や
説明など便利に使える資料を公開中!
ケア情報メール
新たなコンテンツの
公開情報や、ケアに役立つ情報をお届け!
実践ケア動画
エキスパートのワザやコツが
学べる動画を多数掲載!
期間限定セミナー動画
各分野のエキスパートが登壇。
1回約15分で学べる!
電子書籍
書店で販売されている本や、
オリジナル書籍が読み放題!