Part1誤嚥(ごえん)とは何か、なぜ対応が必要か

藤田医科大学病院
看護部 看護科長(摂食・嚥下障害看護認定看護師) 
三鬼達人

2020年1月公開

2.誤嚥(ごえん)で起こること

通常、健常者では「誤嚥」や「喉頭侵入」(食物が喉頭内、声門上に侵入すること)1が起こると、防御反応(咳やむせ)によって気管内に侵入した食物などを除去できます。
しかし摂食嚥下障害をもつ患者さんや、高齢者においてはこの反応が低下していることがあります2。なお、誤嚥をしても咳が出なかったり咳が非常に遅れたりする状態は、「不顕性(ふけんせい)誤嚥」(silent aspiration:サイレントアスピレーション)と呼ばれます。
これらの誤嚥が起こることで最も心配されるのは誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎は誤嚥に引き続いて発症する肺炎のことで、食物・胃内容物・咽頭分泌物(唾液)を誤嚥し、咳反射などでこれらを排除できないときに発生します。
高齢者や要介護状態の方が誤嚥性肺炎にかかると、予後が不良であることが示されています3。厚生労働省による「死因別死亡数の割合」を見てみると、2017年度のデータにおいて、肺炎での死亡率は5位、誤嚥性肺炎での死亡率は7位と示されています(図24

図2主な死因別死亡数の割合(平成29年)

(文献4より引用、一部改変)

誤嚥性肺炎の予防には薬剤による対応もありますが、ケアとしては以下に留意していきましょう。

  • 口腔ケア:口腔内の清潔を保つ(汚染されていると誤嚥の際にリスクがより高くなる)
  • 嚥下訓練:嚥下機能に合わせた訓練の選択
  • 体位調節:胃液の逆流による誤嚥を防ぐ
  • 咳・痰の喀出力の強化:咳嗽訓練、排痰法を行う
  • 栄養状態の改善:適切な栄養管理

引用文献

  1. 1.才藤栄一,向井美惠:2章 摂食・嚥下リハビリテーション総論.才藤栄一,向井美惠 編:摂食・嚥下リハビリテーション 第2版,医歯薬出版,東京,2007:13.
  2. 2.Yamaya M,Yanai M, Ohrui T, et al.:Interventions to prevent pneumonia among older adults. J Am Geriatr Soc 2001;49(1):85-90.
  3. 3.Maeda K, Akagi J.:Muscle Mass Loss Is a Potential Predictor of 90-Day Mortality in Older Adults with Aspiration Pneumonia. J Am Geriatr Soc 2017;65(1):e18-e22.
  4. 4.厚生労働省:平成29(2017)年人口動態統計月報年計(概数)の概況.
    http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/kekka.pdf(2019.7.20アクセス)
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