Part1誤嚥(ごえん)とは何か、なぜ対応が必要か

藤田医科大学病院
看護部 看護長(摂食・嚥下障害看護認定看護師) 
三鬼達人

2020年1月公開

3.絶食を続けることの問題と摂食嚥下(えんげ)開始のタイミング

絶食を続けることによって起こる弊害

誤嚥が怖いからといって、入院患者さんなどに絶食を続け、点滴(静脈栄養)で栄養補給をする、という状況は勧められません。以下にその理由を示します。

1口腔・咽頭の廃用

長期間にわたり絶食を続けると、口腔・咽頭に廃用性の(使用しないことによる)変化が生じ、それらの器官の運動の低下、知覚の低下につながります。

2腸管の廃用

腸管(消化管)を食物が通過しないことで、消化吸収障害や免疫力の低下が起こり、また、bacterial translocation(バクテリアル・トランスロケーション)を引き起こすリスクが高まる1ことが知られています。

  • 生菌以外の死菌・エンドトキシンなどが腸管腔内から腸管壁を越えて全身に移行する全身性の感染症。

摂食嚥下ケアを開始できるタイミング

これらの生理的な理由からも、口から食べることはとてもメリットがあります。それだけでなく、“食べること”は生きる喜びや力につながります。
口から食事を摂取できるタイミングを見抜き、摂食嚥下障害の状況をアセスメントし、できる限り早期に経口摂取への取り組みを進める必要があります。
しかし治療のために絶食を継続しなければいけない場合も多いでしょう。絶食中にも行えるケアや、摂食嚥下ケアのスタートを検討したいタイミングを表12に示します。

表1 摂食嚥下ケアをスタートできるタイミング

絶食の理由 絶食中のケア 経口摂取検討のタイミング
  1. 1治療上の問題から絶食
間接訓練(口腔機能向上訓練)を行う 急性期治療が終了して、全身状態が安定したとき
  1. 2意識レベルの低下から絶食
間接訓練(覚醒していない状態での口腔機能向上訓練/覚醒した状態での口腔機能向上訓練)を行う 意識レベルがJCSで1桁~II-10、清明で、簡単な指示に従える
  1. 3誤嚥性肺炎のリスクから絶食
口腔ケアと、間接訓練(口腔機能向上訓練、呼吸訓練、排痰法)を行う 徴候から明確な判断はしにくいため、嚥下造影(VF)、嚥下内視鏡検査(VE)による正確な嚥下機能評価をもとに行うのが安全

(文献2より引用)

引用文献

  1. 1.竹末芳生:完全絶食下のヒトでbacterial translocationの起こっているエビデンスはあるか.医学のあゆみ 2004;209(5):279-282.
  2. 2.三鬼達人:Part1-5摂食嚥下ケアを始められるタイミングは?.三鬼達人 編著,改訂版・摂食嚥下・口腔ケア,照林社,東京,2019:10-11.

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