2021年10月公開
健康な足を守ることは、患者さんの活力ある毎日を守るためにとても重要なことです。自分の足で歩いてどこへでも行けていた患者さんが、歩行の自由を失ったことで生きる気力までも失ってしまったというような経験をされたことはないでしょうか。足は単なる移動手段にとどまらず、その人らしく生きていくためには欠かせないものです。
足には加齢や慢性疾患に伴ってさまざまなトラブルが生じ、疼痛による歩行困難や、病変の重篤化による下肢切断が起こり得ます。医療者が行うフットケアは、これらのトラブルを防ぎ、「健康な足」を守るためにとても重要です。足を清潔な状態に保ち、血流や感覚障害などの異常、胼胝や陥入爪といった創傷の徴候を早期に発見して予防・治療を行うことで、患者さんが少しでも長く自分の健康な足で歩いていく助けとなります。
足を守ることは健康寿命の延伸や介護予防にも直結し、患者さんや家族の負担を大きく軽減することもできます。国としても力を入れており、厚生労働省の事業として「足指・爪のケアに関する事業」が取り入れられてきたほか、診療報酬上の加算も複数新設されてきました。2016年4月には、「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設され、下肢の切断を予防するための体制・施設基準を満たした際に、診療報酬上の加算がつくことになりました。全国の病院やクリニックでも専門的な「フットケア外来」が増えてきており、フットケアへの関心はますます高まっています。
高齢の方で、長年の足の変形や乾燥によって、胼胝や角質肥厚、爪の異常を訴える方には、皆さんもよく出会われると思います。加齢に伴い、足にはさまざまな変化が訪れます。さらに、高齢者はさまざまな慢性疾患を重複して抱えていたり、末梢感覚が鈍くなる傾向があることから、足の異変に無頓着であったり、気づかず悪化させてしまうケースも多くみられます。
足病変の要因として高齢者によくみられるものをいくつか以下に挙げます。
また、加齢による巧緻性の低下や視力の低下、認知機能の低下に伴うセルフケア不足も高齢の方にみられがちな足病変発症の要因となります。
このように、複数の要因が影響することで、高齢者は足病変が生じやすいことがわかります。足病変は歩行困難や転倒リスクに直結し、寝たきりを招いてしまう恐れもあります。フットケアを行うことが介護予防にもつながるのです。高齢の方ご自身や家族が適切にフットケアを行えるような支援と、セルフケアが難しい場合の医療者によるフットケアの実施が非常に重要です。
足には全身状態にもつながるたくさんのアセスメントのポイントが詰まっています。ナースがフットケアを行う際は、目の前の足にのみ関心を払うのではなく、足病変がみられた場合はなぜそれが起こったのか、今後起こらないようにするためにはどのようなケアや治療が必要になってくるのかなど、「足から全身をみる」ことがとても大切です。
また、フットケアにおいては、病変の早期発見がなにより重要です。重症化する前に専門的な医療機関を紹介して対処することが、患者さんの足を守ることにつながります。
患者さんの中には、他人に足を見られることに抵抗を示す方もいらっしゃいます。日常的に患者さんと接することの多いナースが普段から信頼関係を築き、病棟外でも施設や外来、在宅の現場などでちょっと足を見せてもらう、家族も一緒にフットケアを行うなど、足を見て触れる機会をもちましょう。
足に関心を向け日々のフットケアを実施することが、患者さんの足を守るだけではなく、全身状態の向上、さらにはADLやQOLの向上にもつながります。
〈参考文献〉
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