足浴は、単に足の清潔を保つためだけにとどまらず、保湿や血流促進の効果もあります。爪や角質のケアの前に足浴を行うと、乾燥・硬化した爪や皮膚を軟化させることができるため、その後のケアを安全に、短時間で行うことにもつながります。
さらに、これら足への直接的な効果に加え、温かさや心地よさによるリラックス効果もあり、患者さんとのコミュニケーションの一つにもなります。現在の足の状態やフットケアの大切さについて会話しながら足浴を行うことで、患者さん自身に足に関心をもってもらい、セルフケアを続けていただくきっかけにもなります。
入浴が難しい患者さんにもベッドサイドで行うことができ、また、足浴を行いながら足の観察を行うことで早期に病変に気づくきっかけにもなるため、日々のケアに取り入れるとよいでしょう。
一般的な足浴は、両足一緒にゆとりをもって入れられる程度のサイズの容器に、足関節~下腿部がひたる程度の微温湯(38~40℃程度)を張り、10分前後で行います。バスタオルやひざ掛けで露出部を覆っておくと、患者さんが寒さを感じにくく、お湯も冷めにくくなります。
お湯の温度や足浴の時間は、患者さん個々の皮膚の状態、病変の有無、虚血や神経障害による感覚過敏の有無など、足の状態によって臨機応変に対応する必要があります。足浴時間が長すぎたりすると、皮膚が浸軟して傷つきやすい状態になってしまうこともあるため、よく観察しながら適切な設定を検討しましょう。痛みや苦痛がないか患者さんに伺いながら実施することも大切です。
足浴に用いるお湯は、普通の微温湯のほか、人工炭酸泉や、市販の入浴剤などを用いることもあります。炭酸浴は末梢血管拡張作用があり、下腿部が十分ひたる程度の34~37℃の人工炭酸泉に10~15分程度行うことで効果が認められています1。いずれの場合も皮膚や全身への影響を考慮したうえで、必ず患者さんの同意のうえで使用します。
足浴の際は洗浄も併せて行うことが望ましいです。足が温まり爪や皮膚がやわらかくなってきたら、片足ずつお湯から出し、泡立てた洗浄剤で足全体を洗います。爪と指の間や爪まわりの皮膚、指と指の間などには汚れが溜まりやすいため、ていねいに洗いましょう。皮膚がやわらかくなっているため、こすらないように注意します。
洗浄が終わったら足浴用のバケツで泡や汚れを落とし、きれいな微温湯で十分に洗い流した後、タオルで押し拭きします。この際も、こすり拭きとならないように注意が必要です。
水分を拭き取ったら、最後に保湿を行います。足が温まっている状態のため、続けてマッサージを行うのも効果的です。
具体的な足浴の手順を、図2に示します。
- 1足が十分に入る大きさのバケツに微温湯を張る(38~40℃程度になっていることを確認)
- 2洗浄剤、洗い流し用の微温湯の入ったピッチャー、拭き取り用タオル、保湿剤を準備しておく
- 3患者に足浴を行うことを説明し、承諾を得る
- 4温度を確認したうえで、足を湯につけ、5~10分足浴を行う
- 5片足ずつ足を出し、泡立てた洗浄剤で洗う。爪や爪のまわりの皮膚など細かい部分もしっかりと洗う
- 6足浴用バケツに足を入れ、だいたいの泡や汚れを落とす
- 7ピッチャー内の湯の温度を確認した後(38~40℃程度)、片足ずつ足浴用バケツから上げながら、ピッチャーの湯をまんべんなくかけ、洗い流す
- 8タオルを押し当てるようにして水分を取る。足趾間や爪の周囲などに水分が残りやすいためしっかりと水気を取る
足浴での座位保持などが患者さんの負担になる場合や、在宅等で大きな容器で多くのお湯を使ったような足浴が難しい場合は、ビニール袋を使用した泡足浴が便利です。少量の水で行えるため、臥床したままでも簡便に行うことができ、患者さんや介助者の負担も少なくてすみます。
必要な物品は、ふくらはぎ~膝あたりまでの下肢(片足)が入る程度の大きさのビニール袋、洗浄剤、少量の水、ホットタオル(フェイスタオル程度のサイズ)、乾いたタオル(拭き取り用、ハンドタオル~フェイスタオルサイズ)です。
足浴を行う前に、布団が濡れないように足の下に防水シートを敷きます。在宅の場合は、タオルやレジャーシートで代用してもよいでしょう。患者さんの膝下にクッションを入れ、軽く膝が曲がるような体位をとると、より安楽に行うことができます。
ビニール袋に少量の水(20ccほど)を入れ、洗浄剤を1/2プッシュほど加えます。泡が飛び出さないように袋の口を手でしっかりと持って、袋をもむようにして空気を含ませながらよく泡立てます。泡状で出てくるタイプの洗浄剤だと、より泡立ちやすく便利です。
クリーム状の泡ができるまで十分に泡立ったら、泡の入ったビニール袋に患者さんの足を入れ、泡がこぼれないように口を軽く結びます。
そして、ビニール袋の上から足全体をよく洗います。足背と足底、側面、足趾や足趾間にも洗い残しのないように、ていねいにマッサージするように洗いましょう。
洗い終わったら、泡を取り除くようにしながらビニール袋を足から外し、ホットタオルで足全体を包みます。濡らして絞ったタオルを電子レンジで数秒間温めたものを準備しておきます。必ず介助者が手で温度を確かめ、熱すぎないように注意しましょう。自分の二の腕の内側に当ててみて熱くない程度の温度がめやすです。
タオルに洗浄剤の泡や水分を吸わせるように上から軽く押さえ拭きし、洗浄成分や水分が足に残らないように、足趾間までていねいに拭き取ります。
最後に乾いたタオルで全体を拭き、保湿をして終了となります。
具体的な手順を、図3に示します。