Part4足病変

足のナースクリニック 代表
西田壽代

2021年10月公開

3.足の皮膚疾患

足の皮膚疾患には、炎症や感染を伴うもの、悪性黒色腫などの腫瘍性疾患、皮膚のターンオーバーの異常等によって生じる角化症など、さまざまな病態があります。日ごろから足をよく観察することで、皮膚の色調変化や水疱、潰瘍等にいち早く気づくことが大切です。
ここでは、施設や在宅の場で遭遇する機会の多い、以下の4つを取り上げます。

(1)角化症(かくかしょう)

足の皮膚が乾燥し、角質が肥厚することを角化症といいます。乾燥と角化が進行すると、皮膚の弾力性が失われ、圧迫やずれ力が加わることで亀裂が生じることもあります(図6)。足底、特に踵部は体重を支えるためにもともと角層が厚く、硬めになっており、角化症による亀裂が生じやすい部位です。
皮膚が亀裂すると、痛みはもちろんのこと、感染を引き起こす恐れがあります。肥厚部を削り、保湿するといったケアが大切です(Part5-7.角質肥厚・亀裂へのケア参照)。

図6角質の肥厚による亀裂

胼胝・鶏眼も角化症の一種です。皮膚に長期間、圧迫や摩擦・ずれなどの機械的な刺激が加わり、局所的に角質が増殖した状態です。この角質増殖によって、分厚く肥厚したものが胼胝、角質層が深層に棘のように突起して芯のあるものが鶏眼です(図7)。
胼胝は基本的に痛みを伴いませんが、厚く硬くなった部分に圧がかかると痛みを生じる場合もあります。鶏眼は痛みを伴うことが多く、早めのケアが必要です。肥厚した部分を削り、周囲皮膚と段差がないように整えます(Part5-6.胼胝・鶏眼のケア参照)。
なお、糖尿病患者などで末梢神経障害を伴う方は痛みを感じにくく、胼胝・鶏眼に気づかないまま歩行や圧迫を続け、深部組織が損傷を受ける恐れがあります。特に骨突出部や骨端にできたものには注意が必要です。角質肥厚下や角質肥厚内に血種が認められた場合は、医師に報告し、注意深く削って状態を確認します(図8)。

このような悪化を未然に防ぐためには、患者さん自身に足の観察を習慣にしてもらうことも大切です。足を見て、触り、硬くなってきた部分や黄色っぽく変色してきた部分があれば医療者に知らせるよう、具体的な方法も含めてサポートできるとよいでしょう。

図7胼胝(左)・鶏眼(右)

図8角質下にできた血種

(2)足白癬(あしはくせん)

白癬は白癬菌の感染によって引き起こされる疾患で、手や足、爪、生毛部などに生じますが、なかでも足白癬が圧倒的に多くみられます。
白癬では、足趾間や足底部、後述するように足の爪などに症状がみられます(図9)。角質増殖とそれに伴う落屑や、浸軟した鱗屑を伴う紅斑性局面、小水疱などがみられ、かゆみや痛みを伴うこともあります。
治療には抗真菌薬を用います。また、足の不潔や湿潤状態が誘因となるため、適切な洗浄と適度な乾燥を保ちます。また、同居家族や入所者に白癬症の患者さんがいると、そこから感染が広がることがあるため、足拭きマットやスリッパの洗浄・消毒、室内の床拭きなどを日々行うことが大切です。白癬菌の付着を完全に防ぐことは難しいため、日々の足の洗浄を併せて行うことで、感染・発症を防ぎます。

図9足趾間に生じた足白癬

(3)蜂窩織炎(ほうかしきえん)

主に黄色ブドウ球菌の感染によって、真皮から皮下組織にかけて急性炎症が生じた状態です。糖尿病患者や、下肢の循環障害のある患者さんにみられることが多いです。下腿部にかけて熱感を伴う発赤や腫脹を生じます(図10)。症状が進むと膿瘍化し、発熱や食欲低下、倦怠感などの全身症状が生じます。壊死性に進展すると下肢を切断せざるを得なくなる場合もあり、早期の対処が必要です。
血液検査や細菌培養で蜂窩織炎と診断されたら、抗菌薬による治療を行います。膿瘍化している場合は、切開して排膿が必要になる場合もあります。

図10蜂窩織炎

(4)接触皮膚炎

外用薬や衣服、医療用テープなどさまざまな外的刺激によって生じる皮膚の炎症で、紅斑や水疱、鱗屑などの症状に痛みやかゆみを伴います。原因となる刺激を除去することで対処し、必要に応じてステロイド剤やかゆみ止めを使用します。

〈参考文献〉

  1. 1.宮地良樹,真田弘美,大江真琴 編:最新版 ナースのための糖尿病フットケア技術.メディカルレビュー社,東京,2006.
  2. 2.日本フットケア学会 編,西田壽代 監修:はじめよう!フットケア.日本看護協会出版会,東京,2006.
  3. 3.西田壽代 監修:実践!介護フットケア 元気に歩く「足」のために.講談社,東京,2021.
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