2019年5月公開
現在のストーマ装具は、排泄口の巻き上げなど、認知症でなくても高齢者に取り扱いにくい形であることは確かです。もっと簡単な、高齢者にやさしい装具・排泄の方法になって、“一生懸命覚えなければならないほど難しいストーマケア”を解消していく必要があると思っています。
また、先に示したように、衣服が排泄物で汚れるというのは認知症のサインです。これらのサインを集積して、認知症を早期に発見できるよう、セルフケア能力が落ちているかどうか見られる評価ツールができるといいかもしれません。
しかし、認知症を持つストーマ保有者のケアはケース・バイ・ケースであり、“こう対応”とするのは難しいでしょう。だからこそ、「ゴールをどこに置くか」「ケアで妥協できる点はあるか」「整理してシンプルにできる部分はないか」を考えていく必要があります。
ある時点でこの患者さんの目標が、例えば「便出しができるようになりましょう」だったとしても、認知症は進行するため、だんだん拭けなくなって汚れてしまう場合があります。私たちは“教えたことが悪かったのではないか”“最初からクローズの装具を使って簡単にしたほうがよかったのではないか”、本当に悩みます。しかしそのゴールは、家族にも本人にもわからないため、やはり医療者が示さなければなりません。今後、ある程度のケア介入の標準化を検討する必要があると考えます。
また、在宅の情報に合わせることも重要です。訪問看護が週に2回入るとしたら、ご本人はなんとか便出しができれば、訪問の2回に貼り替えしてもらえて生活できる。“そんな状況に合わせられる装具は何だろう?”“クローズタイプで毎日交換にするとしたら、それをできる人は誰?”と具体的に考える必要があります。
今までストーマケアに限らず看護ケアは、残存機能を活かすために、「本人ができるところはセルフケアで」という前提で進んできました。しかし認知症患者がこれだけ増えてきて、そして治療したとしてもなかなか改善しない現状を考えると、認知症患者であれば、“すべてを看護・介護者に委ねるのをベースにする”と残存機能と介入に対する考え方を変える必要があるのかもしれません。
しかし一方で、認知症ではないストーマ保有者の「認知症になったら排泄ケアをすべて人に委ねなければならないのか」「自分でできる間は自分でケアしたい」という不安もよく聞きます。排泄はとても難しい問題をはらんでいることを実感します。
現在、折衷案として、認知症の方でなくても、今後の管理に不安を覚えるようなストーマ保有者に対しては、できるだけ家族を巻き込んで見てもらうような機会をつくっています。在院日数の短い現在、本人へのセルフケアが追いつかなくて家族指導で終わってしまう場合もありますが、“家族単位”で一緒にケアを覚えてもらえばよいと考えます。
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まとめとして、認知症を持つストーマ保有者へのケアの、今後の課題を図4に示します。
高齢のストーマ保有者において、管理状況を「日常生活の変化」「排泄の変化」からとらえることが、認知症の早期発見につながると考えます。また、早期に発見することで、地域のサポート導入や連携につながり、ストーマ保有者の安全な生活を支えることができると考えます。
ストーマケアにかかわる看護師には、まず「認知症では?」と疑う気づきを持ち、そして認知症の診断へとつなげられる行動力をぜひ持ってもらいたいと思います。
Part1
ストーマケアで持ちたい
「認知症では?」の視点
Part2
知っておきたい
認知症の基礎知識
Part3
認知症患者さんへの対応、
こんなとき
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