これからの普及が期待される「腹膜透析(PD)」とますます重要になる看護師の役割
群馬大学医学部保健学科看護学専攻/
大学院保健学研究科 教授
岡 美智代
2023年7月公開
透析療法とは、不可逆性の慢性腎臓病患者に行われる治療です1。透析療法のうち、血液透析(hemodialysis:HD)は、患者のバスキュラーアクセスに透析針を刺して,血液を透析器(ダイアライザー)に通してきれいにして戻す療法です。最近は、HDと血液濾過(hemofiltration:HF)を組み合わせた血液透析濾過(hemodiafiltration:HDF)も、HDと同程度行われています。
腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)は、腹腔内に腹膜透析用カテーテルを挿入し、腹腔内に透析液を注入して一定時間貯留させたのち排液して血液中の老廃物と水分を除去する方法です。
血液透析と腹膜透析の両療法には、それぞれメリットとデメリットがあります。以下、血液透析と腹膜透析を比べた場合の主な特徴について紹介します。
血液透析の大きな特徴は、一般的には週に3回医療施設に来院して治療を受けるという点です。週3回通院するため、その際に医療者によるケアを受けることができます。
腹膜透析の大きな特徴は、自宅や職場などで自分で透析を行うという点です。腹膜透析の問題がなければ、通院は1~2回/月程度となります。
参考文献
透析患者も新型コロナウイルス感染症による影響を受けていますが、Hsuら2の研究によると、2020年1月1日から同年4月12日までの中国武漢市にある4病院の腹膜透析患者について調査した結果、8人が新型コロナウイルス感染症に罹患したが、810人は罹患しなかったとされています。これは1,000人/月あたりの発生率でみると2.44人であり、同じ都市の一般集団の発生率に近い値だったと報告されています2。
わが国では、腹膜透析患者と血液透析患者の比較において新型コロナウイルス感染症の罹患率が有意に異なるという報告はありませんが、海外では、パンデミックの初期には腹膜透析患者は血液透析患者と比べて罹患率が低く、死亡率も低いことが報告されています3。
腹膜透析は血液透析に比べて通院回数が少ないため、腹膜透析患者が不要不急の外出をしない限りは、血液透析患者よりも感染リスクは回避しやすいと考えられます。しかし、腹膜透析患者は外出先で透析液の交換を行うこともあるため、その際は完全な個室で行うなど、十分な感染予防策を講じる必要があります。
血液透析、腹膜透析、腎移植という腎代替療法を選ぶ際には、それぞれの治療のメリットとデメリットを、患者自身に語ってもらう機会を設けることが重要です4。また、これからは継続的な腎代替療法を選択しない保存的腎臓療法(conservative kidney management:CKM)を患者が選ぶこともあるかもしれません。その場合も、患者や家族がどのような人生を歩みたいのか十分に語ってもらい、時間をかけて何回も話し合いましょう。
引用文献
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