Part3血液透析の原理と実際の進め方

公益財団法人丹後中央病院看護部
慢性疾患看護専門看護師
本井 裕二

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2023年7月公開

1.血液透析の原理

1.血液透析による血液浄化とは

血液透析(hemodialysis:HD)は体外の装置を使って血液を浄化させる方法です。血液透析では、透析器(ダイアライザー)の透析膜を介して血液と透析液を接触させることにより、腎機能の低下により体内で過剰となった物質(尿毒症物質)を除去するとともに、体内に不足している物質の補給を行います(図1、表1)。透析膜を介した物質の除去と補給は「拡散」と「限外濾過」という2つの原理に基づいて行われます。

図1血液透析のしくみ
図1 血液透析のしくみ

小林修三,日髙寿美:まるごと図解 腎臓病と透析.照林社,東京,2017:77.を参考に作成

表1 血液透析での物質の移動

体内から除去される物質 透析液から体内に補給されることがある物質
Na、K、Cl、Ca++、P、UN、Cr、UA、β2MG、水 Na、K、Cl、Ca++、HCO3

2.拡散

濃度差(濃度勾配)によって、透析膜を介して溶質の濃度の高い溶液から濃度の低い溶液へ溶質が移動することを「拡散」といいます(図2)。例えば、お湯が入っているティーポットに紅茶のティーバッグを入れると、無味無色であったお湯が紅茶になります。これは、拡散の原理によってティーバッグの中の紅茶葉の成分(溶質)が、濃度が低いお湯の中に広がっていった結果です。血液透析においては、拡散の原理によって、尿素、クレアチニン、尿酸、カリウム、リンなど小分子物質と呼ばれる尿毒素が除去されます。

図2血液透析の原理:拡散
図2 血液透析の原理:拡散

溶液内で溶質分子が濃度の高いほうから低いほうへ移動する

3.限外濾過

膜に圧をかけることにより、膜によって隔てられた2つの溶液の一方から他方へ、膜(透析膜)の孔を通って水と溶質が移動することを「限外濾過」といいます(図3)。ここでは、ドリップコーヒーを淹れるところを思い浮かべてみましょう。フィルターをセットしたドリッパーにコーヒーの粉を入れ、ポットのお湯を注ぐとサーバーの中にコーヒーが抽出されます。これは限外濾過の原理で、注がれたお湯の圧力によりフィルター(膜)を介してお湯(水)とコーヒーの成分(溶質)が一緒にサーバーに移動した結果です。限外濾過では主に、β2ミクログロブリン(透析アミロイドーシスの原因物質)などの中分子物質が除去されます。また、水とナトリウムは小分子物質ではありますが、拡散ではなく限外濾過によって除去されます。

図3血液透析の原理:限外濾過
図3 血液透析の原理:限外濾過

静水圧の差により水溶液が移動する

参考文献

  1. 1.小林修三,日髙寿美:まるごと図解 腎臓病と透析.照林社,東京,2017:77.
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