2023年7月公開
腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)は、患者自身の身体の中の“腹膜”を使って行う透析療法です。前項で述べたように、血液透析では、患者の体内から取り出した血液を、体外で透析器(ダイアライザー)の透析膜を介して透析液と接触させることにより血液浄化を行います。これに対して、腹膜透析は透析液を腹膜内に注液し、腹膜(腹膜の毛細血管)を透析膜として用いることにより体内で腹膜を介して物質の除去と補給を行います(図1)。血液浄化は、血液透析と同じく「拡散」と「限外濾過」の原理に基づいて行われます。
腹膜透析にはさまざまな治療法がありますが、臨床で一般的に用いられているのは連続携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis:CAPD)と自動腹膜透析(automated peritoneal dialysis:APD)です。詳しくは、次項以降で解説します。
小林修三,日髙寿美:まるごと図解 腎臓病と透析.照林社,東京,2017:98.を参考に作成
参考文献
腹膜透析においても、血液透析の場合と同様に拡散の原理によって尿素、クレアチニン、尿酸、カリウム、リンなど、小分子物質と呼ばれる尿毒素が除去されます。ただし、血液透析と比較して、小分子物質の除去効率は劣っています。
水、ナトリウム、その他の尿毒症物質は、血液透析と同様に限外濾過により除去されます。血液透析では、体外循環している血液側から、透析膜に圧力をかける(陽圧)ことにより限外濾過を行います。腹膜透析では、腹膜透析液の中にブドウ糖もしくはイコデキストリンを加えることにより、浸透圧による水の移動を利用して限外濾過を行います。浸透圧による限外濾過については、例えば、漬物を漬ける場面を考えてみるとわかりやすいかも知れません。漬物は、野菜を塩水に浸すか塩をふりかけます。そうすると、野菜の水分が細胞膜を通って細胞内から細胞外に移動し、漬物ができあがります。腹膜透析液の中に、塩の代わりにブドウ糖やイコデキストリンを浸透圧物質として使用することにより、腹膜の毛細血管の細胞膜を通って体内から透析液の中に水や尿毒症物質が移動すると考えられます(図2)。
浸透圧が高い区画から低い区画に水が移動する
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これからの普及が期待される「腹膜透析(PD)」とますます重要になる看護師の役割
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