2021/12/21
セルフネグレクト(*)や過剰な物の収集・溜め込みなどによって生活環境が極端に悪化する、いわゆるごみ屋敷症候群(ディオゲネス症候群)は、老年期に多くみられ、主に都市部からの報告が多いことが知られている。ときに、悪臭や住居敷地外への物のはみ出しなどから、近所とのトラブル等にもつながることもあり、社会からの注目も高い。しかし、どのような人の住まいが、どのような原因で「ごみ屋敷」になってしまうのかは、これまでわかっていなかった。
東京都健康長寿医療センター研究所の井藤佳恵氏らの研究チームは、2011年以来継続して、東京都の都市部で暮らす高齢者困難事例の研究を行っている。前述のような背景を受け、同チームではこの10年間に蓄積したデータから、ディオゲネス症候群の臨床的特徴と長期予後を明らかにし、適切な支援方法を検討することを目的に、追跡調査を行った。
高齢者困難事例270人の住環境を評価し、ディオゲネス症候群60人と非ディオゲネス症候群210人の2群に分けて比較した結果、一人暮らし、進行した認知症、日常生活動作の低下などが、ディオゲネス症候群のグループで多くみられることがわかった。このような状態に陥った際に適切な支援を受けられなければ、誰もがディオゲネス症候群になる可能性がある、と同チームは報告している。
さらに、生命予後についても調査した結果、とりわけ介入から1年以内の死亡率が高いことも明らかになった。
このような結果から、ディオゲネス症候群では身体的健康のリスクが高い方が多く、その点に早期から十分に配慮した支援方針を考える必要がある、と同チームは結んでいる。
高齢化・少子化が進み、独居高齢者は今後ますます増加するとみられる。ディオゲネス症候群では住環境に目が行きがちとなるが、あわせて身体的健康リスクについても注意し、自宅への訪問時やデイサービス利用時などに、室内の様子と利用者の身体・認知機能などの双方を気にかけるよう心がけたい。
*生活環境や栄養状態が悪化しているのに、それを改善しようという気力を失い、周囲に助けを求めない状態
詳しくは、東京都健康長寿医療センターWebサイト(2021年10月28日<プレスリリース>「いわゆるごみ屋敷症候群は、一人暮らしの高齢者が、認知症が進行し身体機能が衰えてきたときに適切な支援が得られないことと深く関連する:10年間の追跡調査にて判明」参照。
【関連ページ】
●認知症の人の在宅ケアを考える
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