2023/3/20
筑波大学と山口県立大学の研究グループは、高齢者を対象とした研究によって、運動が認知機能の低下予防に効果的であること、さらに、一人で行う運動よりも、仲間と一緒に行う運動のほうが、その効果が高いことを示した。
高齢者の認知症の予防に有効なもののひとつとしてよく知られているのが“運動”だ。また、社会交流の充実も、認知症予防には不可欠な要因である。近年の研究から、集団で行う運動が、認知機能の低下予防に有効であることが報告されている。
同研究グループは、高齢者4,358名を対象に、「一人で行う運動や仲間と行う運動は、どの程度実践されているのか」および「どちらの運動が認知機能障害の抑制効果があるのか」について、4年間にわたる追跡調査を行った。認知機能障害の判定には、厚生労働省が基準を示す「認知症高齢者の日常生活自立度」を用いている。
高齢者の運動実践状況については、一人で行う運動の場合、非実践者が約半数の52.4%、週1回実践者が5.8%、週2回以上実践者が41.8%となった。一方、仲間と行う運動は、非実践者が75.2%、週1回実践者が6.1%、週2回以上実践者が18.7%であった。一人で行う運動の方が、仲間と行う運動よりも広く行われていることがわかる。
次に、運動による認知機能障害抑制効果を検討した。追跡期間中に、対象者の7.7%(337名)に、認知機能障害が確認された。運動の実践状況と合わせて認知機能障害の発生リスクを解析した結果、週2回以上運動を実践している群は、一人で行う運動(22%のリスク減)、仲間と行う運動(34%のリスク減)のどちらにおいても認知機能障害の発生を有意に抑制することがわかり、仲間と行う運動の方がより抑制効果が強いことが明らかとなった。
以上の結果から、高齢者の認知症予防においては、一人で行う運動の意義を認めつつも、仲間と行う運動を推奨していくことが重要であると示唆された。
なお、本研究では、運動における“仲間”の具体的な構成については考慮できておらず、例えば夫婦のみでの運動と老若男女が混在する運動とでは、心理状態や会話のバリエーションが異なったり、まとめ役の人とそれ以外の人とで認知機能への影響が変わる可能性もある。研究グループは、今後の展開として、運動中の他者とのかかわり方による認知機能への影響の違いを検討する必要があると結んでいる。
コロナ禍においては、地域での体操教室や友人と連れ添っての運動の機会などが激減し、いわゆる“コロナフレイル”が問題となった。そのようななかでも、屋外でのウォーキングや、人数を絞ったりスペースを広くとったりしての体操教室、また、自宅からWEB上に集まって同じ動画を見ながら運動を行うなど、さまざまな試みが行われている。各施設や地域での取り組みや事例を共有することで、認知機能・身体機能の維持向上へのヒントにもなるだろう。
詳しくは、下記の筑波大学WEBサイト(TSIKUBA JOURNAL)参照
「運動は一人よりも仲間と行う方が認知機能の低下予防に効果的」を参照
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20230112141500.html
【関連ページ】
●筋力低下に対する運動療法
https://www.almediaweb.jp/motorsystem/exercise-therapy/
●「ディアケア プレミアム」
筋力低下に対する運動療法(実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat02/theme001/index.html
●転倒リスクに気づき、転倒を予防する
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/1911/
●「ディアケア プレミアム」
転倒予防に役立つ評価・運動と、転倒防止のための移動介助(実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat02/theme002/index.html
●認知症患者への具体的看護ケアの実際
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