2025/4/8
広島大学は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対するL-アルギニン塩酸塩の経口投与が安全であり、栄養管理に有用である可能性を示唆する研究結果を発表した。この研究は、ALS患者においてL-アルギニン塩酸塩の安全性と忍容性を臨床評価した世界初の試みである。
L-アルギニン塩酸塩は、血管拡張や免疫調整、神経保護などの役割を持つアミノ酸の一種で、サプリメントや医薬品としても利用されている。体内で一酸化窒素の産生を促進することで血流改善が期待される成分だ。
今回の研究では、20人のALS患者を対象に、1日15gのL-アルギニン塩酸塩を90日間にわたり連日投与するという前向きオープンラベル試験が実施された。対象患者の平均年齢は62歳、病歴の中央値は1.9年であった。
試験期間中、1人がALS関連症状の進行により75日で中止(中止率:5%)、6人(31.6%)に高クレアチンキナーゼ血症、肝機能異常、食欲不振といった治療関連有害事象(TEAE)が確認されたが、いずれも重篤なものではなく、死亡例は認められなかった。また、服薬遵守率は99.7%と非常に高かった。
研究の結果、ALS患者の体重やBMIの減少が抑えられ、体重維持とL-アルギニンの血中・尿中濃度が関連していることが示唆された。ALS患者にとって体重減少は疾患の進行と密接に関係しており、栄養管理が重要な課題となっている。これまで高カロリーや高脂肪食が検討されてきたが、一貫した治療効果は確立されていなかったため、L-アルギニン塩酸塩が新たな選択肢として期待される。
広島大学では、今後、より大規模な無作為化比較試験(RCT)を通じて、L-アルギニン塩酸塩の有効性をさらに詳しく検証する必要があるとの認識を示している。また、栄養状態と神経変性の関係を解明するためのバイオマーカー解析も計画されている。
詳しくは、下記広島大学のWebサイトを参照
【研究成果】筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者へのL-アルギニン塩酸塩投与の 安全性および忍容性を世界で初めて検証しました~ALSの栄養管理に新たな可能性~
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/88797
【関連ページ】
●「ALSとは?筋萎縮性側索硬化症の症状と在宅療養生活を支える看護ケア」
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/2501/index.html
●「ナースが知っておきたい栄養の基本と栄養サポートの進め方」
https://www.almediaweb.jp/nutrition/
●摂食嚥下ケアの基本の"き" これだけは押さえる 嚥下機能の評価法とリハビリテーション
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