Part1看護におけるタッチング

東都大学 幕張ヒューマンケア学部看護学科成人看護学
教授
岡本佐智子

2021年12月公開

1.さまざまなタッチングの分類

患者さんの身体に手や指で触れることを、タッチ、あるいはタッチングといいます。
看護におけるタッチ/タッチングには、その目的に応じてさまざまな分類があることをご存知でしょうか。

例えば、Estabrooks1は、集中治療領域の看護師を対象にした検討から、タッチを“Caring Touch”、“Task Touch”、“Protective Touch”の3つに分類しました。Caring Touchは、“意図的タッチ”とも訳され、患者さんの心身の援助を目的に肯定的感情をもって触れることをいいます。Task Touchは更衣やバイタルサインの測定など、生活の援助やアセスメントなどを目的に触れることを指します。Protective Touchは、例えば患者さんが転倒しないように身体を支えるなど、患者さんや看護師の身体と感情を保護・防衛するために触れることを指します。

日本では、土蔵2が“共感的タッチ”、“道具的タッチ”、“治療的タッチ”があると述べています。共感的タッチは、患者さんとのコミュニケーションを基盤としたタッチであり、道具的タッチはEstabrooksによるTask Touchとほぼ同義と言ってよいでしょう。治療的タッチには疼痛緩和を目的としたマッサージやタッピングなどが含まれます。

意図的タッチについて、藤野3は、「看護師が意図して、必ずしもタッチが必要でない場面で、何等かの患者の反応を期待して行うもの」であり、「清拭やマッサージなどであっても安楽を与えることを目的とした場合には、意図的タッチに含む」と説明しています。

タッチ/タッチングのほかに、“タッチケア”という言葉もあります。これは、認知症ケアや小児ケアの分野でよく使われている言葉で、心身のケアを目的に触れる、意図的ケアの意味合いが強くあります。

このようにタッチ/タッチングにはさまざまな分類が存在します。ここでは主に、看護師が患者さんに“手で触れる”行為をとおし(図1)、相手の気持ちに共感し、寄り添う気持ちを伝えるための身体接触という意味で“タッチング”という言葉を使用します。非言語的コミュニケーションの1つとして、患者さんに安心と安楽をもたらし、相互作用が期待できる有効な方法としてご説明していきます。

図1看護師によるタッチング(ハンドマッサージ)
タッチングは患者さんに“手で触れる”行為をとおし、相手の気持ちに共感し、寄り添う気持ちを伝えるための1つの方法である

引用文献

  1. 1.Estabrooks CA: Touch: a nursing strategy in the intensive care unit. Heart Lung 1989;18(4): 392-401.
  2. 2.土蔵愛子: 臨床に活かすタッチング さまざまなタッチの分類. 月間ナーシング 2003;23(10): 116-119.
  3. 3.藤野彰子: 終末期がん看護における意図的タッチによる痛みの緩和. 女子栄養大学栄養学部教育学研究室紀要 : 「教育とジェンダー」研究 2000; 3: 39-52.
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