2021年12月公開
私たちの全身を覆う皮膚には、外界の刺激から身体の内部を守るだけでなく、何かが触れたときに反応する感覚器としての役割があります。これを “皮膚感覚”あるいは“表在感覚”といいます。そして、この皮膚感覚は、触覚や痛覚、温度覚などから成り立っています。
タッチングは、皮膚感覚の中でも、触覚に直接働きかけるケアです。触覚は、皮膚表面に力(機械的刺激)が加えられることで生じます。皮膚の中には、圧力や振動、皮膚の伸展などに反応する数種類の“触覚センサー”が存在し、それらが組み合わさって皮膚感覚を得ることができます。
この触覚センサーは機械受容器と呼ばれ、主なものとしてメルケル盤、マイスナー小体、ルフィニ終末、パチニ小体の4つがあります(図1)。これらの受容器は存在する場所や感知する刺激に違いがあります(図2)。
近年、これらの受容器に加えて、まったく別の機能を持つ「C触覚線維」という神経が発見されました。このC触覚線維は有毛部に存在しています。毛根にからみつくように線維が伸びており、皮膚表面をさするときに生じる毛の振動を感知し、刺激を脳に伝える役割があります。そのため官能機能とも呼ばれ、触覚によって快や不快、安心感や嫌悪感といった感情を喚起させるというとても大きな特徴があります。
触れることによる皮膚への刺激は、手の密着と圧迫、手の温かさ、触れられている位置、なでる速度などが、神経の働きをとおして脳に伝わり、自律神経系、内分泌系、免疫系に影響を及ぼし1全身に作用します。そして、その刺激を心地よいと感じることによって、不安の緩和、孤独からの解放、安心感の獲得、自尊心の回復2など、情動面によい影響をもたらすのです。
タッチングは、その実施の過程、あるいは実施の結果として、触れてきた相手に対する親近感を形成し、関係性を構築する助けとなることから、心理・社会面にもよい影響を与えるといえます。
引用文献
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