Part2触れることで生じる反応

東都大学 幕張ヒューマンケア学部看護学科成人看護学
教授
岡本佐智子

2021年12月公開

2.心地よい触れ方のポイント

皮膚にはさまざまな感覚受容器があり、乱暴な触れ方をすれば、それはそのまま脳に伝わります。皮膚を傷つけるだけでなく、不快な感情も引き起こします。

では、ここでマッサージに活かせる触れ方のポイントをご紹介します(図3)。触れ方次第で効果が大きくかわりますので、ご紹介する方法を実践に活かし、ケアの質向上に役立ていただければと思います。

図3心地よい触れ方
マッサージの際は手のひら全体で触れ、ゆっくりとしたスピードで手を動かし、圧は慎重にかけるようにする。また手を温めておくことも大切である

(1)ゆっくりとしたスピードで

マッサージの重要なポイントは、手をゆっくりと動かすことです。例えば、先ほどご説明したC触覚線維の働きからすると、山口は「相手の背中に秒速5cmほどでゆっくりと触れてみると、抑うつも不安も顕著に低下した。逆に手を動かす速度を、速すぎたり遅すぎたりすると、自律神経の交感神経が優位になって、覚醒水準が上がってしまった」1と述べています。手技に集中すると、手の動きが速くなりがちですので、速度を意識するようにしましょう。

(2)手のひら全体で触れ、圧のかけ方は慎重に

1か所に圧を集中させるような触れ方は避けます。手のひら全体を使って広い面積でさすることで、圧を分散させます。また、圧力のかけ方にもコツがあります。健康な人は、ある程度しっかりと圧をかけたほうが気持ちよいと感じることがありますが、高齢者は皮膚も薄く、人によって筋肉量も異なるため、弱い圧から様子を見ながら圧をかけていきます。力のかけ方について、400g程度の圧をかけ800gまでの間で調整する方法2もあります。一度、秤に手を乗せて、どの程度の圧が何gくらいになるのか、確認してみることをおすすめします。タオルで清拭を行うよりも弱い圧であることがわかります。

(3)温かい手で

タッチングの前は、必ず手を温めておきましょう。冷たい手で触れられると患者さんが緊張され、身体に力が入ってしまいます。手が冷たいときは、カイロなどで温めておくとよいでしょう。

引用文献

  1. 1.山口創: 皮膚感覚と脳. 日東洋医物理療会誌 2017; 42(2): 9-16.
  2. 2.堀内園子:触れるケア. ライフサポート社,横浜, 2010: 101-102.
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