2021年12月公開
看護の現場で行うタッチングにはどのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、タッチングの3つの効果について考えてみます。
緊張して不安なときに、背中や手などに触れてもらうことで安心できたという経験はありませんか。タッチングの主な効果には、このリラクセーション効果があります。では、この“リラクセーション”とはどういった状態をいうのでしょうか。
リラクセーションは“ストレスが軽減した状態”あるいは“ストレスが緩和した状態”というように、ストレスとの対比をとおして説明されることが多い言葉です。しかし、ストレスが解消することとリラクセーションは同じ状態なのかというと、そういうわけではありません。
ストレス解消法には、のんびりとくつろぐ「静」の方法と、カラオケで歌を歌うことなどですっきりする「動」の方法があります。つまり、ストレスが緩和することで得られる「快適な状態」には、覚醒度の高い「活動的快」と、覚醒度の低い「休息的快」の2つがある1といえるでしょう(表1)。
表1ストレス解消法
動【活動的快】 | 静【休息的快】 |
など |
など |
覚醒度が高く、活力がある状態は、リフレッシュされた状態です。また、覚醒度が低く、平穏で落ち着いている状態は、リラクセーションが得られた状態です2, 3, 4。これらのことを踏まえると、リラクセーションとは、ストレス緩和の一種であり、緊張が少なく穏やかな「休息的快」の状態と定義することができます。
タッチングによるリラクセーション効果については、多くの先行研究があり、比較群のある研究デザインや健康な成人を対象に、条件を統制した介入研究で検証が重ねられています5, 6。効果を測定する指標としては、気分や緊張度をたずねる質問紙調査などをもとにした心理的指標や、心拍や血圧、呼吸、脳波などによる生理的指標などが用いられています。
例えば、小川ら7が行った、介護老人保健施設に入所する高齢女性を対象にハンドマッサージが及ぼす心身への影響を検討した研究では、ハンドマッサージを受けた群において、疲労の軽減や気分の快方向への変化、手部の皮膚温度の上昇が認められるとともに、唾液中のコルチゾールの減少が示唆されています。コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンで、“ストレスホルモン”としても知られています。
この研究で興味深いのは、マッサージを実施したのが初対面のボランティアである点と、コルチゾールの濃度が実施前と比べ、マッサージを受けた人では減少し、受けなかった人では上昇したという点です。マッサージを受けなかった人は、ボランティアと会話のみします。知らない人と話をするわけですから、心理的な負荷が高まり、コルチゾールの濃度が上昇することは当然の反応のように思われます。それが、ハンドマッサージを実施することで、たとえ知らない相手でもストレス状態が緩和されたわけです。
論文の中でも言及されていますが、面識のない相手のマッサージでも、一定の効果が示されたことから、実施する人が家族や信頼できる看護師など、もっと身近な存在であれば、さらに大きな効果を得られる可能性があります。
引用文献
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