基本から実践まで! 事例でよくわかる! 在宅酸素療法(HOT)の実際
地方独立行政法人 大阪府立病院機構
大阪はびきの医療センター看護部
(慢性疾患看護専門看護師)
平田 聡子
2022年3月公開
在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOT)は、慢性呼吸器疾患等によって十分に酸素を取り込むことができなくなった患者に対して、在宅で行われる“酸素療法”です。そこで最初に、“酸素療法”の基本についてお話しておきましょう。
酸素は、生体の組織が正常に活動するのに不可欠な物質です。さまざまな原因によって酸素の供給が不足すると、組織は酸素が不足するために細胞のエネルギー代謝が障害された状態となります。この状態を“低酸素症(hypoxia)”と呼びます。酸素療法とは、低酸素症に対して室内気よりも高い濃度の酸素を投与する治療法です。適切な濃度の酸素を吸入することで、低酸素症の改善を図るのが目的です1。
肺は左右に1つずつある臓器で、右肺は上葉・中葉・下葉、左肺は上葉・下葉からなっています(図1)。左肺が右肺より小さいのは心臓があるためです。
外から入ってくる空気は気道(鼻口→気管→気管支)を通ります。鼻腔、咽頭、喉頭を上気道、気管と気管支を下気道と呼びます。気管は気管分岐部で左右の主気管支に分かれ、さらに分岐を繰り返し、最終は肺胞となります(図2)。
肺胞まで運ばれた空気と血液の間では、“ガス交換”が行われています。肺胞でガス交換が行われると、酸素濃度が高く二酸化炭素の濃度の低い“動脈血”となり、酸素を体中の組織へ運びます(図3)。
肺胞内の空気と血液の間のガス交換を外呼吸、運ばれていった血液と組織の間で行われるガス交換を内呼吸といいます。肺の病気で障害されるのは、ほとんどの場合、外呼吸です(図4)。
肺胞と血管との間で行われる(外呼吸)酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかないと低酸素血症になります。例えば、肺炎などの炎症が肺胞で起こると、炎症が起きている肺胞ではガス交換をうまく行うことができないため、低酸素血症となるのです。
肺から取り込まれた酸素の多くは、血液中のヘモグロビンと結びついて、末梢組織まで運ばれます。ヘモグロビン1分子に対して、4分子の酸素が結びつきます(図5)。
ヘモグロビンの何%に酸素が結びついているかを示すのが酸素飽和度(SaO2)ですが、この値は血液ガス検査でしか測定できず、その時点の状態しかわかりません。そこで、日常的には、容易に測定できる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を使用します。経皮的動脈血酸素飽和度を(SpO2)は、皆さんが普段から使用されているパルスオキシメーターで測定します。ただし、患者の状態によっては、SaO2とSpO2が大きく乖離することもあるため、注意が必要です。
また、SaO2やSpO2はヘモグロビンに結びついている酸素の割合を測定した値です。そのため、貧血などで酸素を運搬するヘモグロビン濃度がもともと低い場合は、正常値を示していても、低酸素血症になっている可能性があるため、値だけでなく、患者のバイタルサインや呼吸状態、病態生理も合わせてアセスメントすることが重要です。
引用文献
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