2024年7月公開
最初に心不全の原因で最も多い「虚血性心疾患」についておさえておきましょう。虚血性心疾患とは、狭心症や心筋梗塞のことで、「心筋に血流を提供する冠動脈が閉塞・狭窄し心筋へ十分な血液がいきわたらなくなった状態」をいいます。心不全は、この虚血性心疾患による心筋のダメージや、加齢による心臓や動脈の変化による高血圧や弁膜症の発症により、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出すことができなくなった状態を示す症候群です。そこに至るまで心臓は無理をして血液を送り出そうと頑張りますが、やがて疲れ果ててバテてしまった状態といえます。
心不全患者数は、虚血性心疾患の増加や高齢社会となる中で、1950年代から増加し続け、2020年の推計患者数は全国で約120万人、2030年には130万人に達すると推計され、今後も増加することが推測されています1。
このことを国民医療費の観点から考えてみましょう。2016年度の傷病別医科診療医療費の総額30兆1,853億円のうち、循環器系の疾患が占める割合は、全体の約20%(19.7%)の5兆9,333億円と最多でした。そのため、2018年に「健康寿命を延伸するための脳卒中、心臓病その他に係る対策に関する基本法」が可決・成立した経緯があります2。
さらに、病院完結型から地域包括ケアシステムの中で医療が提供されるようにシフトしていく中で、令和6年度の診療報酬の改定にも、在宅医療・訪問看護に係る事項として、地域包括ケアシステムにおける在宅医療に力点がシフトしていることが見受けられます。心不全においても、在宅における心不全患者等の指導管理に係る評価が新設されました。例えば、在宅麻薬等注射指導管理料に心不全または呼吸器疾患が新設されたことで、在宅において緩和ケアを要する心不全患者に麻薬の注射に関する指導管理が認められるようになったことや、在宅強心剤持続投与指導管理料が新設されたことにより3、在宅においても強心剤の持続投与をした患者の管理や状態観察をする機会に遭遇することになります。
このように、今後も心不全患者数は増加することが推測され、かつ医療提供体制が変化し続けていく中で、ますます重要になっているのが「心不全看護」です。そこで、この特集では心不全看護の基本を、疾患管理のモデルをもとに解説していきます。そして、在宅心不全患者の事例における具体的な看護展開の中で、疾患管理モデルの具体的な例を紹介していきます。今後も変わり続けていく医療提供体制の中で、本稿がさまざまな心不全患者さんの看護を検討する際の一助となれば幸いです。
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