Part7慢性心不全患者の在宅療養を支える

東京情報大学 看護学部看護学科 教授
岡田 彩子
公益財団法人埼玉県看護協会与野訪問看護ステーション所長
訪問看護認定看護師、介護支援専門員
古山 千栄子

一部会員限定
ページあり!

2024年7月公開

この章では、訪問看護ステーションでのケースをもとに、慢性心不全患者のセルフケア支援について、①在宅ケア継続のための働きかけ、②在宅での急性増悪への対応法、③訪問看護師が留意したいこと、の3つのポイントで検討していきます。

【ケース紹介】Aさん、男性、83歳、80歳の妻との2人暮らし
【病 名】陳旧性心筋梗塞、慢性心不全末期
【病歴とその後の経過】
1995年に心筋梗塞にて冠動脈バイパス手術を施行し、退院後の状態は安定、近隣クリニックで内服治療を行いながら、健常な人と変わらず、各地を転々と営業の仕事を続けていました。60歳で定年退職し、その後は建設にかかわる下請け業務を自営業として長男と続けていました。
2019年頃、過去のバイパスグラフト不全による低心機能状態となり、呼吸困難が出現し、緊急入院・治療を受けました。この時点では左室機能は駆出率40~50%を保っていたため、退院後は、日常生活に支障がないレベルを保ちつつ、疾患管理をしていました。しかし、その半年後に、両側胸水、呼吸困難、両下肢にも著明な浮腫を認め再入院となりました。左室肥大、左室収縮能・拡張能低下、軽度の三尖弁・僧帽弁閉鎖不全症が認められ、慢性心不全の急性増悪、心機能は通常25%と診断されました。また、腹部大動脈瘤(33.2㎜×38.4㎜)があり、日常生活では、日々の体調管理と残存心機能に応じた生活行動を送ること、そして急変の可能性もあるので要注意、経過観察と言われていました。

1.主治医からの訪問看護依頼

末期の心不全状態で、労作時の息切れ、呼吸困難感により自宅にこもりがちで、上記の診断後、さらに苦しさを訴えるようになり、起座位でないと眠れなくなることがありました。積極的治療はしないという本人の強い希望もあり、今後症状の進行や急変の可能性が高いことが予測されるため、体調管理と服薬管理、患者・家族のサポートを目的に訪問看護の指示がありました。

2.Aさん本人・家族の要望

  • Aさん「自分はもうあきらめているから、このまま苦しくなく最期を迎えられればいい、妻の不安が強いので、ときどき様子を見てほしい。入院も治療も絶対しない。」
  • 妻「とても息苦しそうにすることがあり、どうしたらいいのかわからない。本人は絶対入院も治療もしたくないと言っている。仕方がないと思っているが、どうしたらよいか相談に乗ってほしい。」

3.訪問開始時のアセスメント

初回訪問時、看護師に重症感を感じさせず衣服も自分で整え、ソファーに座り、毅然とした様子で今までの経過、そして、今後のことについて本人から説明されました。認知症症状はなく、疾患、病状への理解はされており、「25年前に大手術を行い、入院治療も大変だったので、もうそんな思いはしたくない、十分生きられた。心臓も人の25%しか機能していない、このまま自宅で死にたい。最期のときに妻が不安がらないように訪問看護は受けようと思う」と決意をしっかり話されました。

そこで、以下の看護計画を立案し、本人・家族の同意のもと週1回の訪問をすることになりました。

【看護計画】

  1. 1.状態観察(体重の増加2kg/2~3日以上増加、尿量減少・塩分制限、水分制限1,500mL/日、浮腫の増悪)
  2. 2.服薬確認
  3. 3.下肢筋力保持のリハビリテーション

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