Part2心臓の役割と心不全の症状

東京情報大学 看護学部看護学科 教授
岡田 彩子

一部会員限定
ページあり!

2024年7月公開

2.心不全の症状

心不全とは、「何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器が必要とする血液量を十分に供給できなくなった(送り出せなくなった)状態」です。心不全になると、臓器や組織に酸素や栄養が足りない状態を引き起こしたり、全身から心臓に戻る血液が滞ってしまうことによって、呼吸困難や倦怠感、浮腫などのさまざまな症状として観察されます(図4、表1)。そして、心不全の状態が進行することに伴い、十分に酸素化された血液が臓器や組織に供給されないことから、運動耐容能が低下し、日常生活の中でさまざまな行動や動作に支障をきたしてしまいます。

このような状態を患者や患者家族に対して説明する際は、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」と一般向けの定義が示されています(『急性・慢性心不全診療ガイドライン』2021)1

図4左心不全・右心不全の症状

左心不全の症状
右心不全の症状

野原隆司,岡田彩子,三浦英恵,他編:ナーシング・グラフィカEX 疾患と看護(2)循環器.メディカ出版,大阪,2020:139より引用

表1左心不全と右心不全の自覚症状と他覚所見

横にスクロールしてご覧いただけます。

病態 機序 自覚症状 他覚所見
左心不全 左房圧上昇による肺うっ血 息切れ、呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、咳・痰、心臓性喘息 湿性ラ音、喘嗚、ピンク色泡沫状喀痰、Ⅲ音・Ⅳ音の聴取、大脈・小脈、心尖拍動の偏位、房室弁逆流性雑音
心拍出量低下 夜間多尿・乏尿、易疲労感、全身倦怠感、意識障害、不穏、動悸 低血圧、頻脈、交互脈、遅脈・奇脈、末梢の冷感、チアノーゼ、身の置き場がない様相
その他 口渇 チェーン・ストークス呼吸、睡眠時無呼吸、ばち状指
右心不全 右房圧上昇による体静脈うっ血 食欲不振、悪心・嘔吐、下痢・便秘、腹部膨満感、体重増加、浮腫 頸動脈怒張、肝腫大、肝・頸動脈逆流、腹水貯留、黄疸

野原隆司,岡田彩子,三浦英恵,他編:ナーシング・グラフィカEX 疾患と看護(2)循環器.メディカ出版,大阪,2020:147.より引用

引用文献

  1. 1.日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン:2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版
    急性・慢性心不全診療.https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Tsutsui.pdf (2024/4/24アクセス)
  2. 2.野原隆司,岡田彩子,三浦英恵,他編:ナーシング・グラフィカEX 疾患と看護(2)循環器.メディカ出版,大阪,2020:147.
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる