2023年5月公開
インスリン開始になると「インスリン注射が打てる」ことにばかり注目しがちですが、表1に示したように、インスリンの手技習得は支援の一部にすぎません。初めに、インスリン治療が開始になったことに対してどのような思いを抱いているのか、開始にあたって医師からどのような説明を受けたのかを聞きます。開始理由を正しく理解していないと、インスリンへの拒否感が強くなったり、入院中だけインスリンを受け入れて、退院してからは打つのをやめてしまったということが起こりかねません。最近は、糖毒性解除のために一時的にインスリンを使用することも多いのですが、インスリンは始めたら一生打たなければならないという誤った認識をもっている患者もいます。医師の説明内容と患者の認識が一致しているか確認し、患者のインスリン療法に対する受け入れ状態を査定します。誤った認識があるならそれを訂正し、インスリンの必要性を補足説明します。
表1 インスリン導入の支援
インスリンの名称を覚える、または名称をどこかに書き留めて置く、もしくは携帯電話などで注射器を撮影しておくことも必要です。なぜなら、災害発生時やかかりつけ医以外を受診した際に、「インスリンを打っている」というだけでは適切な処方を受けられないからです。適切な保管方法を知らないと薬液の劣化や作用時間の変化が生じ、血糖コントロールが乱れる原因になります。注射針は医療廃棄物なので家庭ごみに捨てず、使い終わった注射器は自治体の決まりに則って処理します。
注射部位の選択も大切です。注射部位によってインスリンの吸収速度が異なり、お腹が最も速く、上腕、お尻、太ももの順に遅くなります。また、気温や入浴後など体温が高いほうが速く吸収されます。類似部位にばかり注射していると、その部位が硬結しインスリンの効きが悪くなるので、サイトローテーションを指導します。長年インスリン注射をしている患者ほど硬結していることがあるので、「打つ場所を変えている」という患者の言葉を聞くだけでなく、実際に注射部位を触診することが必要です。
インスリンの手技練習は、パンフレットやチェックリストを用いて、まずは練習用の注射器を使って、注射器の扱いや一連の流れに慣れてもらい、ある程度できるようになってから自己注射に移行するとよいでしょう。指導する看護師によって指導がばらつかないように、指導内容や指導方法を看護師間で統一することも、患者の混乱を招かないために重要です。
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