2023年5月公開
糖尿病性腎症の有病率は糖尿病罹病期間とともに増加し、20年の罹病期間で約20%の有病率と言われており、新規透析導入の原疾患第1位です。糖尿病性腎症は、病期により臨床症状や自覚症状が大きく異なります。自覚症状が乏しい病期では腎症があるという実感をもちにくく、また、医療者も血糖値が安定していると腎不全期まで見逃しやすいということがあります。病期により治療内容が変化し、糖尿病だけの頃より自己管理が複雑になります。患者が腎症という新たな病気と向き合い、無理なく療養生活を続けられるよう支援します。
糖尿病性腎症の病期分類は、尿アルブミン値やeGFRにより第1期から第5期に分類されています(表1)。
尿アルブミン値が糖尿病性腎症の早期診断や治療効果判定および予後判定のうえできわめて重要であり、尿中アルブミン排泄量(UAE)を正確に測定することが必要です。随時尿でアルブミン/クレアチニンの測定を3~6か月に1回定期的に行います。日を変えてUAEを測定し、3回中2回以上微量アルブミン尿が確認されると、早期腎症と診断されます。UAEを定期的に測定することが必要ですが、尿タンパクだけ測定し、UAEを測定していない施設が少なくありません。また、採尿手技によってデータが大きく変動しますので、正確に採尿できるよう支援します。
表1 糖尿病性腎症の病期分類注1)
病期 | 尿アルブミン値(mg/gCr)あるいは尿タンパク値(g/gCr) | GFR(eGFR) (mL/分/1.73m2) |
---|---|---|
第1期(腎症前期) | 正常アルブミン尿(30未満) | 30以上注2) |
第2期(早期腎症期) | 微量アルブミン尿(30~299)注3) | 30以上 |
第3期(顕性腎症期) | 顕性アルブミン尿(300以上)あるいは持続性タンパク尿(0.5以上) | 30以上注4) |
第4期(腎不全期) | 問わない注5) | 30未満 |
第5期(透析療法期) | 透析療法中 |
注1)糖尿病性腎症は必ずしも第1期から順次第5期まで進行するものではない。本分類は、厚労省研究班の成績に基づき予後(腎、心血管、総死亡)を勘案した分類である(Clin Exp Nephrol 18:613-620,2014)。
注2)GFR60mL/分/1.73m2未満の症例はCKDに該当し、糖尿病性腎症以外の原因が存在し得るため、他の腎臓病との鑑別診断が必要である。
注3)微量アルブミン尿を認めた症例では、糖尿病性腎症早期診断基準に従って鑑別診断を行ったうえで、早期腎症と診断する。
注4)顕性アルブミン尿の症例では、GFR60mL/分/1.73m2未満からGFRの低下に伴い腎イベント(eGFRの半減、透析導入)が増加するため注意が必要である。
注5)GFR30mL/分/1.73m2未満の症例は、尿アルブミン値あるいは尿タンパク値にかかわらず、腎不全期に分類される。しかし、特に正常アルブミン尿・微量アルブミン尿の場合は、糖尿病性腎症以外の腎臓病との鑑別診断が必要である。
【重要な注意事項】本表は糖尿病性腎症の病期分類であり、薬剤使用の目安を示した表ではない。糖尿病治療薬を含む薬剤、特に腎排泄性薬剤の使用にあたっては、GFR等を勘案し、各薬剤の添付文書に従った使用が必要である。
糖尿病性腎症合同委員会:糖尿病性腎症病期分類2014の策定(糖尿病性腎症病期分類改訂)について.糖尿病 57:529-534,2014より一部改変
日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド2022-2023.文光堂,東京,2022:87.
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