2021/5/6
エビデンスに基づいた医療(Evidence Based Medicine :EBM)の考え方は、1990年代から医療現場に広がり、現在では広く浸透している。介護現場でも近年、“科学的介護”の考え方が広まりつつあり、エビデンスに基づいて介護サービスやケアの内容などを客観的情報として利用者に提示できるような取り組みが進められている。令和3年4月1日からは、厚生労働省が運用する「科学的介護情報システム(LIFE)」の運用が始まった。これは、従来の「通所・訪問リハビリテーションデータ収集システム(VISIT)」と「高齢者の状態やケアの内容等データ収集システム(CHASE)」を一体化したものである。令和3年度の介護報酬改定においては、以下のように、LIFEの活用を算定要件に含む「科学的介護推進体制加算」も新設された。
①施設介護サービス
・科学的介護推進体制加算(Ⅰ)40単位/月
・科学的介護推進体制加算(Ⅱ)60単位/月
(※特別養護老人ホーム・地域密着型特別養護老人ホームに関しては50単位/月)
②通所・小規模多機能・居宅介護サービス
・科学的介護推進体制加算(Ⅰ) 40単位/月
高齢化が進むわが国においては、このような科学的根拠に基づいた介護サービスやケアの提供に加え、要介護状態に陥ることを未然に防ぐ、“エビデンスに基づいた介護予防”も両輪として行っていくことが求められている。これまでに、国立長寿医療研究センターの荒井秀典氏を研究代表とする厚生労働省長寿科学政策研究費事業として、「エビデンスを踏まえた効果的な介護予防の実施に資する介護予防マニュアルの改訂のための研究」が進められてきた。そしてこの度、「介護予防ガイド 実践・エビデンス編」としてその研究成果がまとめられた。
本ガイドは、以下の10項目のマニュアルから構成されている。
① 運動機能向上マニュアル(全般)
② 運動器疾患用マニュアル
③ 呼吸循環器疾患用マニュアル
④ 糖尿病用マニュアル
⑤ 脳卒中用マニュアル
⑥ 栄養改善マニュアル
⑦ 口腔機能向上マニュアル
⑧ 閉じこもり予防・支援マニュアル
⑨ 認知機能低下予防マニュアル
⑩ うつ予防・支援マニュアル
それぞれのマニュアルは、ケアや支援の目的と効果、リスク管理、効果判定方法、プログラムなどからなり、全体像を把握するために必要な情報が概説されている。また、各マニュアルにはエビデンステーブルもついており、各論文等に立ち返ることで、より専門的に理解を深めたい場合にも役立つ。
具体的な観察項目や、実施時間・内容・頻度などがイラスト等も交えて詳細に紹介されているため、すぐに現場で取り入れられるような内容となっている。
詳しくは、下記の国立長寿医療研究センターWebサイト参照
「介護予防ガイド 実践・エビデンス編」
https://www.ncgg.go.jp/ri/topics/documents/yobo-guide.pdf
【関連ページ】
●筋力低下に対する運動療法
https://www.almediaweb.jp/motorsystem/exercise-therapy/
●転倒リスクに気づき、転倒を予防する
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/1911/
●現場でできる!摂食嚥下ケア
https://www.almediaweb.jp/swallowing/swallowing-care/
●ムリなく ムダなく できる! 口腔ケア
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