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小児のストーマケアの実際
子どものスキンケアの実際

2015年5月公開

1.子どもの皮膚の特徴

子どもの皮膚は薄く、皮膚の厚さは体の部位によって違いますが、生まれたばかりの赤ちゃんの皮膚の厚さは大人の約1/2といわれています。そのため、さまざまな刺激を受けやすくとても敏感です。

子どもは大人と比較して、体重あたりの体表面積が大きいため、不感蒸泄(ふかんじょうせつ)や発汗の影響を受けやすいため、体温調節がむずかしく、熱が出たりすることがあります。不感蒸泄とは、汗以外の体からの水分喪失で、呼吸や皮膚からの排泄です。乳児の不感蒸泄は成人の約2倍の量で、そのため、汗をかきやすく、装具が剥がれやすくなるなど問題があります。

赤ちゃんは皮脂の分泌は多いのですが、その後1歳頃から10歳頃までは皮脂の分泌が少なくなります。そのため冬はもちろんですが、夏でもカサカサすることがあります。そのために皮膚のバリア機能が未熟なため、ちょっとした刺激で湿疹や皮膚炎を起こしたりすることもあります。

普段、気をつけてケアを行っているのにトラブルが起こってしまった場合は、あわてないで、まずストーマや周囲皮膚をよく観察してみてください。なぜトラブルが起きたか、原因を探ることが大切です。

2.皮膚のトラブル

1)剥離刺激

小児、特に乳児の皮膚は薄く、脆弱(ぜいじゃく)で皮膚の保護作用が未熟なために外的刺激を受けやすく、装具を剥がす際の剥離刺激などでも皮膚が赤くなったりします。装具を剥がす場合には愛護的にゆっくり剥がしましょう。

また、粘着力が強い場合には、粘着力の弱い皮膚保護剤にするか、交換間隔を1日伸ばしたほうがよいこともあり、外来等で担当の医師や看護師に相談しましょう。

2)排泄物の付着

便の付着

ストーマ近接部がただれていたり、便や尿が皮膚に付いている場合には排泄物による皮膚炎が考えられます。面板の保護剤が溶けすぎている場合には、1日早めに交換するとよいでしょう。

また、便が装具の下にもぐりこんでいる場合には、ウエハーで補正するか、凸型タイプの装具を選択します。
「3.症状別対処法 便・尿が漏れる」の項をご参照ください。

アルカリ尿の付着

子どもの尿路ストーマの尿は大人と比較するとアルカリ性に傾きやすく、アルカリ尿にしないような工夫が必要です。アルカリ尿が皮膚に付くと皮膚炎を起こしやすくなったり、長期になるとストーマ周囲皮膚が硬くなったりすることがあります。尿が濁る、尿量が減った、熱があるなどの症状があれば医師や看護師に相談しましょう。こまめに水分を与えて、尿を出すようにして尿をきれいにし尿を酸性に傾けるようにするなどもよいでしょう。

3)粘着剤などのアレルギー

テープでかぶれている場合

ストーマ装具を装着するときに、テープなどで補強することがありますが、この粘着テープが皮膚障害を起こす原因となっていることがあります。

特にアトピー体質の子どもは皮膚炎が起こりやすいなどがあります。

対処方法はなるべくテープを使用しないようにすることです。どうしても使用する場合には、装具が皮膚になじむまでテープを使用し(30~60分)、その後は、テープを除去してしまいます。

どうしても使用せざるを得ない場合には、テープを皮膚に貼付する前に皮膚被膜剤(リモイスコートなど)を塗ってからテープを使用すると皮膚炎の予防になります。皮膚保護剤が当たっている部分全体が皮膚炎を起こしている場合、皮膚保護剤が合わないのかもしれません。医師か看護師に相談しお子さんにあった装具に変更してもらいましょう。

4)感染

ストーマ周囲皮膚に赤い湿疹や膿(うみ)をともなった湿疹がある場合には皮膚に感染が考えられます。医師か看護師に相談し皮膚科医に診てもらいましょう。

5)その他

ストーマからの出血

装具交換時など、ティッシュに少し付く程度であれば問題はありません。出血が止まらなかったり、ストーマ袋に血液がたまるようなら医師に相談してください。また、面板の穴あけが小さく、切り口が当たって刺激になった場合や衣類などでこすれた場合は、ストーマが傷つき出血しやくなります。穴あけの大きさや服でストーマを締め付けていないかなど確認をしてください。

脱出

咳をしたり、泣いたりするときに、ストーマが長く出てくることがあります。

自然にもどることもありますが、ストーマの色が黒くなったり、腸粘膜が傷ついているようなら医師や看護師に相談ください。

陥没(または陥凹(かんおう))

ストーマが皮膚より下に陥没してくる場合には、便や尿が漏れやすくなる場合もあります。症状別対処法の漏れの項目を参照し、装具変更やアクセサリーの使用を検討しましょう。

3.症状別対処法

【便・尿が漏れる】

原因①

ストーマが陥没(陥凹)していたり、周囲皮膚にくぼみやしわがありませんか?

対策

ストーマ周囲にしわやくぼみがあると装具が密着しにくく、皮膚と面板の間に隙間ができます。この隙間に便がもぐりこむことで、皮膚炎の原因になることがあります。ウエハーなどで皮膚の凹凸を補正しましょう。ウエハーの使用法は下図を参考にしてください。

原因②

ストーマが平坦または陥没(陥凹)ぎみでありませんか?

対策

凸型タイプの装具か、リング状のウエハーを追加して使用します。

また、必要に応じて補助ベルトを併用してください。

原因③

面板の穴あけはストーマの大きさにあっていますか?

対策

ストーマの大きさを測りなおしましょう。商品の箱の中にあるカッティングゲージ(透明のシート)をストーマにあて、その上から細いマジックでストーマの大きさを写します。

面板の穴あけはストーマより2~3mm大きめにあけてください。ストーマの大きさは体動や、腸の動きで変化します。

泣いたときやおなかに力をいれたとき、ストーマが出て、やや大きめになることがあります。そのときの大きさを一度測ってみてください。ストーマが一番大きいときのサイズに合わせて、装具をカットしてください。

原因④

装具の交換間隔が長くありませんか?

対策

皮膚保護剤により装具の交換間隔は異なります。また、面板の裏をみて保護剤が5mm以上溶けていれば交換時期なので、それ以上溶けている場合には交換間隔を早めるか、ウエハーなどの皮膚保護剤を追加する必要があります。

原因⑤

石けんや洗浄剤で皮膚をきれいに洗っていますか?

対策

皮膚に便が付いていると皮膚炎の原因となります。装具交換時は石けんや洗浄剤で皮膚をきれいに洗いましょう。ただし、皮膚炎の場合には石けんの使用は避け、お湯だけで洗いましょう。(→ストーマ周囲皮膚の清潔へ)