2015年5月公開
鎖肛は「さこう」と読みます。生まれつき、正常な位置に肛門がない状態です。
妊娠初期(妊娠に気づくかどうかという時期)に、直腸や肛門、性器が形成される過程が正常に進まなかった場合に起こることがあります。
原因不明で、遺伝性もありません。出生10,000人に対し2.0~2.5人でみられ、女の子より男の子に多いです。
鎖肛は以下のように分類されます。図1を参考にしてください。
図1 鎖肛の分類
鎖肛は、本来は肛門につながっている直腸の一番端っこが直腸を取り巻いている括約筋(恥骨直腸筋)より上にあるか下にあるかで3タイプに分けられます。これにより、治療方法が分かれます。
この鎖肛には、直腸の端が完全に閉ざされていることが少なく、瘻孔といわれる交通路ができ他の場所につながっていることがあり、つながっている場所により(身体のつくりで男女差があります)、さらに以下のようにいろいろなタイプに分かれます。
多く見られる タイプ |
男の子 | 女の子 |
---|---|---|
高位 | 直腸尿道瘻:直腸が尿道につながっている | 直腸総排泄腔瘻:尿道・腟・直腸が総排泄腔につながり陰部にひとつの穴しかないもの |
中間位 | 直腸球部尿道瘻:直腸が尿道の折れ曲がっている部分につながっている | 直腸総排泄腔瘻:上に同じ |
低位 | 肛門皮膚瘻:肛門が外陰部の皮下につながっている | 肛門腟前庭瘻:肛門が腟の前のところにつながっている |
便が出ないことから、腹部膨満(おなかがパンパンに張ること)や嘔吐があります。ひどくなると、穿孔(せんこう:腸に穴が開いてしまうこと)で重症になることもあります。
また、尿道につながっている場合は、尿に便が混じって出てくることがあります。
治療方法を決めるのに検査が行われます。
[検査・診断]
視診
男の子の場合、陰嚢から正常に肛門があるべきところまでを確認します。
女の子の場合、腟の後ろの部分から正常に肛門があるべきところまでを確認します。
X線検査
会陰部に出口、瘻孔のない赤ちゃんの場合に行います。赤ちゃんを逆立ちした状態にして腸にたまっているガスを直腸の端に集めて検査します。その映像で、高位・中間位・低位のどのタイプなのかを検査します。
その他
赤ちゃんの状態により、尿検査やつながっている交通路を診断するために造影剤を使って検査する場合もあります。
[治療]
低位
会陰から正常な位置に肛門をつくる「会陰式肛門形成術」をします。肛門腟前庭瘻のように、他の交通路ができている場合には、浣腸やブジー(器械を使う、または指を入れて肛門を広げる処置)という処置をしながら便を出し、時期をみて肛門をつくる手術をします。
中間位
ストーマをつくる手術をし、時期をみて仙骨下端から会陰にかけての切開創から瘻孔を切断して、直腸下端を引き下ろし、正常な位置に肛門をつくる「仙骨会陰式手術」をします。
手術後、落ち着くのを待ち、ストーマを閉じます。
高位
ストーマをつくる手術をし、時期をみて開腹しておなかから瘻孔を処理して、直腸下端を引き下ろし、正常な位置に肛門をつくる「腹(仙骨)会陰式手術」をします。
手術後、落ち着くのを待ち、ストーマを閉じます。
女の子で直腸総排泄腔瘻のときは、肛門をつくるとき一緒に会陰に腟をつくります。
診断と治療の流れ
術後の新しい肛門の機能は、個人差がありますが、「低位」は良好です。高位ほど先天的に肛門括約筋の量が少なく、術後も漏れを防ぐための排便訓練が必要です。
最近では、肛門機能の理解が深まり手術も進歩しているので、生活に適応できます。
手術でつくった肛門から便が出るようになったら、1日1回浣腸をします。これは、できるだけまとまった量の便が1回で出るようにするためです。
少しずつ何回も便を出すことや、便がしたいという感じが不十分な状態のまま直腸に便のかたまりをつくらないようにします。
手術でつくった肛門は縫ったところが狭くなりやすいので、ブジーを1日1回はしていただくようになります。
2歳くらいになったら、毎朝食後30分トイレでいきむようにします。いきむことで、排便を促すためです。もし、いきめず便が出ないときは、浣腸や坐薬で便を出すきっかけをつくるようにしていきます。
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