2015年5月公開
腸を動かす「神経節細胞」が生まれつき欠けているため腸の運動がうまくいかず、食べたものが通過できなくなる病気です。神経節細胞が欠いているところは腸の一部分やもっと広範囲になっていることもあります。
妊娠初期(妊娠に気づくかどうかという時期)に、腸の神経節細胞の発達が正常に進まなかった場合に起こることがあります。
出生5,000人に対し1人の割合でみられ、女の子より男の子に多いです。
腸管の肉眼的な所見では、狭小部・移行部・膨大部の3つに区別できます。
狭小部は、腸管内の神経節細胞が欠けている状態です。移行部では神経節細胞がありますが、数が減少しています。膨大部は、神経が正常に多く存在します。
直腸やS状結腸までの範囲で神経節細胞を欠いている場合が多いですが、大腸全部と小腸まで広範囲に神経節細胞を欠いている場合もあります。
多くは新生児期(出生後28日未満の乳児)から症状が出ます。腸管の運動がうまくいかないため、通過障害を起こすことから、おなかが大きく張る、吐く、便秘があります。
特におなかが大きく張る症状は特徴的です。中には、幼児期(満1歳から小学校就学直前に達するまで)以降にがんこな便秘で発症することがあります。
[診断のための検査]
おなかのレントゲン撮影
注腸造影:造影剤を使いレントゲン撮影をします。
直腸粘膜生検:肛門より見える範囲の直腸の粘膜の一部をとり、その粘膜に神経線維が増えているかを確認します。この検査で診断が確定されます。
[治療]
神経節のない腸管の範囲が短い場合
洗腸や浣腸をし、排便を促し時期をみて乳児期(1歳に満たない子ども)早期に根治術という手術をします。
神経節のない腸管の範囲が広い場合
手術をして正常な腸管にストーマをつくります。その後時期をみて(生後6~12か月後くらい)根治術という手術をします。
根治術
神経節細胞のない範囲の腸管を切除して、神経節細胞が正常にある腸管を引き下ろし肛門と吻合します。
最近では、おなかを開けずに肛門から手術する方法も多くみられるようになっています。
どの術式で手術をしても、肛門管に内肛門括約筋の一部が残っています。これは、神経節のない腸管で弛緩させることができません。根治術後の排便は、緩ませることができない括約筋の抵抗に対して、腹圧をかけて排便することになります。
肛門からの排便が始まったら、1~2回/日に浣腸をして、いきみを誘い、できるだけまとまった量の便が出るようにします。これは、少しずつ何回も出る便を防ぐこと、便を出す感じが不十分な状態で直腸に便のかたまりをつくらないようにすること、ガスがたまるのを防ぐためです。
縫ったところが狭くなりやすいので、ブジー処置を1日1回はしていただくようになります。
ガスが出なくて、大腸が常に大きくなっているときは、肛門からチューブを入れて、ガスを抜くようにします。
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