2021年2月公開
入所者・利用者や職員を取り巻く環境中には、目に見えない細菌やウイルス、真菌(かび)など多くの微生物が存在しています。そのうち病気の原因となるような微生物を「病原体」と呼びます。その病原体が人のからだに入り込んで増殖した状態を「感染」といいます。さらに、感染した後に発熱や下痢など何らかの症状が出現した状態が「感染症の発症」です。つまり、病原体に感染したら必ず感染症を発症するのかというと、そうではないということです。
ノロウイルスを例にあげると、ノロウイルスに感染したけれどもまったく症状が出ない人は30%の割合であったという報告があります1。これは、約3人に1人はノロウイルスに感染しても症状が出ないということです。また、新型コロナウイルスにおいても、検査で陽性となった無症状陽性者が多く存在していることも周知の事実です。
このように、病原体に感染しても何の症状も現れない人を、「不顕性感染者」あるいは「保菌者・キャリア」と呼びます。不顕性感染者は、感染していることに気づかずに病原体を排出して感染を拡げる感染源になってしまうリスクがあります。そして、「無症状の人から受けた感染だから、うつされた人も無症状」ではなく、中には重症化してしまう人もいます。
感染は、病原体が存在する感染源から、感染経路を通り、次に感染を受ける人のからだに入り込んで増殖して起こります。つまり、①感染源、②感染経路、③宿主(ヒト)の3つの要素が揃ったときに感染が成立します(図1)。
以下のものには病原体が存在し、感染源になる可能性があります。
病原体が、感染源から次に感染を受ける相手にうつっていく経路です。主な感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染の3つがあり(図2)、高齢者施設ではさらに血液媒介感染にも注意します。
感染を受ける人を「宿主」と言います。病原体の量や強さ(毒力)と感染を受けた人のからだが備えている抵抗力・免疫力(病原体から身体を守ってくれる防御システム)のバランスによって、感染・発症・重症化するかしないかが決まります。一般的に、高齢者は抵抗力・免疫力が低下するため感染を受けやすく、感染症を発症すると重症化しやすくなっています(図4)。
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