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COVID-19対応も基本は同じ!
高齢者施設での感染対策の実際

医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院
看護部長/感染管理認定看護師
小澤美紀

2021年2月公開

Part5感染を起こさないための日常の予防対策①:標準予防策と手指衛生

1.標準予防策の実践

入所者や利用者全員の血液(血液が付着したものすべてを含む)・体液(胃液、腟分泌物など)・汗を除く分泌物(唾液、痰、鼻水、目やになど)・排泄物(尿、便、嘔吐物)、粘膜(目、鼻・口の中、陰部、肛門など)、傷のある皮膚(傷口、褥瘡、胃ろう挿入部や点滴刺入部、ひどく荒れた皮膚など)からは感染する可能性があると考えて対応します。
標準予防策は、自分と入所者・利用者全員を守るために、日常から行う重要な感染対策です。その内容は多岐にわたりますが、高齢者施設では表1に示した8項目が特に重要です。

表1高齢者施設で特に重要な標準予防策

横にスクロールしてご覧いただけます。

標準予防策の項目 対応例
手指衛生
  • ケアの前後に手指衛生を行う
  • 手に汚れが見えるときや排泄物などで汚染が考えられるときは、流水と石けんで手を洗う
  • 手に汚れが見えないときは、擦式手指消毒剤で手指消毒を行う
個人防護具の使用
  • おむつ交換のときには手袋、エプロン(ガウン)を着用する
  • ケアが終了したら、自分の皮膚とユニフォーム、周りの環境を汚染させないように脱ぐ
ケアに使用した物品や器具の取り扱い
  • 使ったコップやレクリエーションで使用した物品などは、適切な洗浄・消毒・滅菌方法を選択し、処理をしてから次に使用する
リネンの取り扱い
  • 使用したシーツなどは速やかに片づける
環境対策
  • 環境を清潔に保つ
  • 人がよく触るところを中心に清拭する
血液媒介病原体防止
  • 傷口などからの出血があれば、手袋を着用し直接触れない
  • 使用した針は速やかに専用容器に廃棄する
感染者の配置
  • 感染症の診断がついたとき、あるいは疑われるときには、可能な限り個室管理にする
咳エチケット
  • 咳がある人にはマスクを着用してもらう
  • 飛沫が手に付着した可能性があれば手指衛生を行う

2.手指衛生

毎日の業務の中で、手指衛生は最も基本かつ重要な感染対策です。手指衛生には、「液体石けんと流水による手洗い(handwashing)」と「擦式アルコール手指消毒剤による手指消毒(hand disinfection)」の2通りの方法があります。以前は、石けんと流水による手洗いが第一選択でしたが、2002年にCDC(アメリカ疾病予防管理センター)から発表されたガイドライン1により、擦式アルコール手指消毒剤が優先されるようになりました。

通常は擦式アルコール手指消毒剤による手指消毒(以下、「手指消毒」)を行い、手に汚れが見えるときとノロウイルスが検出されている入所者のケアの後には液体石けんと流水による手洗い(以下、「手洗い」)を行います。

手指衛生が必要とされているのは、以下の5つのタイミングです(図1)。

  1. 1入所者・利用者に接する(触れる)前
  2. 2清潔処置を行う前
  3. 3体液や血液に触れた可能性がある場合
  4. 4入所者・利用者に接した(触れた)後
  5. 5ベッド柵や車いすなどの入所者・利用者の周りの環境・物品に触れた後

図1手指衛生5つのタイミング

WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care.
http://whqlibdoc.who.int/publications/2009/9789241597906_eng.pdf(2015.3.10.アクセス)より作成

特に、入所者・利用者に接する(触れる)前には手指衛生を確実に行い、自分自身が持っているかもしれない病原体を入所者・利用者にうつさないようにすることが重要です。手指衛生を必要な場面で行えるように、利用しやすい場所に手指消毒剤を置くこともポイントです。認知症の入所者・利用者が、手指消毒剤を持っていってしまったり飲んでしまったりする危険があるときには、携帯用手指消毒剤を携行する方法もあります。

1液体石けんと流水による手洗い

1準備
  • 爪は短く切っておく
  • (長袖の場合)袖をまくっておく
  • 腕時計を外しておく
  • 指輪を外す、またはずらしておく
2実施(図2)
  • 手指を流水で洗う
    流水ですすぎ洗いを15秒間しただけでも、皮膚上の細菌数を90%以上除菌できる。さらに、洗浄力の目安となる石けんの泡立ちもよくなる
  • 適量の液体石けんを手にとる
    しっかりとワンプッシュする
  • 洗い残しが多い部位(指先、指と指の間、手の甲、手首)に注意して洗う
    手のひら→指の間→爪・指先→手の甲→親指→手首の順で洗う
  • 洗い終わったら、ペーパータオルでよく水分を拭き取る
    手が濡れていると微生物が新たにくっつき伝播しやすくなるため、洗浄後は水分をよく拭き取る。また、ペーパータオル素材のざらつきで手の皮膚の表面に傷がつくことがあるため、こすらないように注意しながら拭き取る
  • 水道栓が自動でない場合は、手を拭いたペーパータオルを用いて閉める
  • 手を完全に乾燥させる
    手洗いの回数が増えると、手がカサカサになったりひび割れが起きるなど、手荒れしやすくなる。手荒れした皮膚は細菌が入り込みやすく、洗い落としにくくなる。普段からハンドケアに心がけ、手荒れ防止に努める

図2液体石けんと流水による手洗い

①まず手指を流水で濡らす
②石けん液を適量手のひらに取り出す
③手のひらと手のひらを擦りあわせてよく泡立てる
④手の甲をもう片方の手のひらで揉み洗う(両手)
⑤指を組んで両手の指の間を揉み洗う
⑥親指をもう片方の手で包み揉み洗う(両手)
⑦指先をもう片方の手のひらでこすり洗う(両手)
⑧両手首まで丁寧に揉み洗う
⑨流水でよくすすぐ
⑩ペーパータオルでよく水気を拭き取る

2擦式アルコール手指消毒剤による手指消毒

擦式アルコール手指消毒剤は一定の消毒効果が得られ、携帯用が準備できればいつでもどこでも手指消毒を行うことができます。手が汚れていたり濡れていたりすると消毒効果が十分に得られなくなるため、手に、目に見える汚れがなく、乾燥している状態で行います。

1準備
  • 爪は短く切っておく
  • (長袖の場合)袖をまくっておく
  • 腕時計を外しておく
  • 指輪を外す、またはずらしておく
2実施(図3)
  • 擦式アルコール手指消毒剤を適量手にとる
    メーカーが推奨する必要量を使用する。量が少ないと消毒効果が得られない
  • 手のひらと手のひらをこすり合わせ、洗い残しが多い部位(指先、指と指の間、手の甲、手首)に注意して擦り込む
    手のひら→指の間→爪・指先→手の甲→親指→手首の順で擦り込む。よく擦り込むことによって消毒効果が高まる
  • 消毒薬を十分に乾燥させる
    擦式アルコール手指消毒剤は保湿剤を含む製品も多く、石けんと流水に比べて手荒れが少ないとされている。しかし、アルコール過敏症や手荒れがひどい場合はアルコール含有製品の使用を控え、専門家に相談しながら手に合った消毒剤を選択する

図3擦式アルコール手指消毒剤による手指消毒

①消毒液を手のひらに取る
②手のひらと手のひらを擦り合わせる
③指先・指の背をもう片方の手でこすり洗う(両手)
④手の甲をもう片方の手のひらでこする(両手)
⑤指を組んで両手の指の間をこする
⑥親指をもう片方の手で捻りこする(両手)
⑦両手首まで丁寧にこする
⑧乾くまで擦り込む
⑨乾いたら完了

文献

  1. 1.CDC. Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings. MMWR 2002; 51 (RR-16) .
    https://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5116.pdf

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