医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院
看護部長/感染管理認定看護師
小澤美紀
2021年2月公開
Part12特に気をつけたい感染症とケアの実際①:インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
Part12とPart13では、高齢者施設などで特に気をつけたい主な感染症を取り上げ、その概要と感染症対策、ケアの実際と予防策について解説します。
1.インフルエンザ
1特徴
- 病原体:インフルエンザウイルス
- 潜伏期間:平均2日(1~4日)
- 感染経路:①咳やくしゃみなどで発生する飛沫を吸入することによる飛沫感染、②飛沫が付着した環境表面や物に手が触れ、その手を介して付着したウイルスが鼻や口の粘膜から侵入して感染する接触感染
- 症状:急な発熱(38~40℃)と全身症状(頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感等)。高齢者では微熱から平熱にとどまる場合があるため注意が必要
2感染対策
- 標準予防策に加えて、飛沫感染予防策、接触感染予防策で対応します。
3ケアの実際
- 1居室
-
- インフルエンザを疑う(および診断された)場合は、個室に隔離します。隔離ができない場合は、カーテン隔離などを行います。
- 複数の入所者にインフルエンザの疑いがあり、個室が足りない場合には、同じ症状の人を同室とします。
- 居室のドアは開けたままでかまいません。
- インフルエンザを疑う(および診断された)入所者に認知症があり、施設内を徘徊してしまう場合は、感染していない人を隔離する「逆隔離」も一つの方法です。
- 解熱後2日経過し、症状がなければ個室隔離を中止します。
- 2食事
-
- 個室内で食べます。
- 食器は使い捨てにする必要はありません。
- 3排泄
-
- トイレに行くとき(居室から出るとき)はサージカルマスクを着用し、手指消毒を行います。
- トイレは専用にする必要はありません。
- 4入浴
-
- 5清掃
-
- ベッド周囲の環境は飛沫が付着している可能性が高いため、アルコールによる清拭を行います。
4予防策
- 流行前に、利用者と職員にインフルエンザワクチンを接種しておくことが有効です。
- 手指衛生と咳エチケットを確実に行います。職員が行うだけではなく、家族・面会者に対しても手指衛生の実施とマスク着用の協力をお願いします。
- 施設内に持ち込まれないように、家族・面会者に対しては体調がすぐれないときには面会を控えてもらうことをお願いし、職員は体調不良のときには出勤しないようにするなどの体制を整えておきます。
- 診断された入所者が発熱する1日程度前に、1~2m以内に接触した入所者をピックアップし(例えば、食事で向かい側にいた等)、体調に変化がないか注意します。
- 抗インフルエンザ薬の予防投与については、日本環境感染学会より提言されています。管理者は、かかりつけ医や保健所に相談し、方針を決定します。
2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
1特徴
- 病原体:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)
- 潜伏期間:一般的には約5日(1~14日)。未感染者については14日間にわたり健康状態を観察することが推奨される
- 感染経路:①咳やくしゃみなどで発生する飛沫を吸入することによる飛沫感染、②飛沫が付着した環境表面や物に手が触れ、その手を介して付着したウイルスが鼻や口の粘膜から侵入して感染する接触感染
- 症状:多くの症例で発熱、呼吸器症状(咳、咽頭痛、鼻汁など)、頭痛など、風邪やインフルエンザの症状と類似。また、味覚障害、嗅覚障害を訴える人も多く、さらに息苦しさや強い倦怠感が特徴ともいわれる。感染者の多く(約8割)は軽症であるが、約2割は重症化するといわれる。特に、高齢者や基礎疾患がある人が重症化しやすい傾向にある
2感染対策
- 感染者や濃厚接触者が発生した場合には、標準予防策に加えて、飛沫感染予防策、接触感染予防策で対応します。
- 管理者は保健所に報告するとともに、施設内での対応を速やかに開始します。
3ケアの実際
- 1感染者が出た場合
-
- 入所者は原則入院です。入院までの間は個室に隔離します。可能な限り、
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COVID-19対応も基本は同じ!
高齢者施設での感染対策の実際