Part3回復期におけるリハビリテーション

令和健康科学大学 リハビリテーション学部 学部長/
カマチグループ関東本部 リハビリテーション関東統括本部長
稲川 利光

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2022年5月公開

1.回復期リハビリテーションの役割とアプローチ

回復期は患者さんがその後の長い生活に向けて歩き出すための大切なステップとなる時期です。回復期におけるリハビリテーションの役割とアプローチを表1に示しました。

患者さんの身体機能の回復ばかりにとらわれることなく「これまでどのような人生を送ってこられたか、これからどのような人生を歩んでいかれるか」といった思慮のもとに、患者さんやご家族とのかかわりを深めていきます。そして、寝返りや起き上がりなどの基本動作を促し、食事、排泄、更衣、整容などの生活行為につなげ、自宅復帰や社会参加の実現をめざします。リハビリテーションにおける看護の大切なところは、生活行為を促し、生活が広がっていくように患者さんにかかわることです。

表1 回復期リハビリテーションの役割と主なアプローチ

役割 主なアプローチ
全身管理 病状の安定化
肺炎や尿路感染などの合併症予防
廃用症候群などの二次障害の予防
経口摂取の確保
十分な栄養摂取と水分確保
排泄・排尿の管理
口腔ケア・歯科治療・義歯調整
身体機能改善 機能練習・嚥下練習
義足・装具・自助具などの検討
生活行為の確保(寝返りや起き上がり、座位保持、更衣や排泄などの基本的な生活行為の援助・遂行)
外出・外泊訓練、交通機関の乗車訓練
意識状態の改善 せん妄や不穏状態・うつ症状などの改善・治療
精神的安定 夜間の睡眠の確保、生活パターンの安定化
高次脳機能の改善 失語・失行・失認、その他、記銘や判断、注意障害へのアプローチ
日常生活動作(ADL)の改善 寝返り・起き上がり・座位などの基本動作の維持
移乗や歩行動作の安定化
更衣・排泄などの生活行為の獲得
転倒・転落予防
調理や炊事・洗濯などの応用動作
自宅復帰に向けた援助 家屋評価・家屋改造、福祉用具の検討
試験外泊
地域スタッフとの連携
復学・就労に向けての働きかけ 学校訪問、教務との連携
職業リハビリテーション施設・訓練校などへの紹介
ジョブコーチ※1との連携
交通機関の利用 通院・通勤手段の確保
乗車練習
制度の利用 介護保険の申請・導入
障害者手帳の申請
障害年金の申請
社会参加に向けての働きかけ 趣味や楽しみの発見
人とのかかわりの維持
ピアカウンセリング※2などへの参加
  • ※1 ジョブコーチ(job coach)
    ジョブコーチは、障害者が一般の職業で働くことを実現するため、障害者と企業の双方を支援する就労支援の専門職
    ジョブコーチの主な支援内容は、①障害のある人のアセスメント、②職場開拓、③職場のアセスメント、④ジョブマッチングの調整、⑤仕事の支援、⑥ナチュラルサポートの形成、⑦フェイディング、⑧フォローアップ、⑨家族への支援・助言
    国および地方自治体が、ジョブコーチの考え方と方法論を取り入れて、さまざまな就労支援事業を実施している。代表的なものが平成14年度に厚生労働省が開始した「職場適応援助者(ジョブコーチ)」事業であり、これに関連して平成17年10月に、「職場適応援助者助成金」が創設され今日に至っている。
  • ※2 ピアカウンセリング(peer counseling)
    ピア(peer)とは「仲間」という意味。同じような障害や悩みをもつ人たちが集まり、自分の悩みや体験談を話す。対等な立場で同じ仲間として行うカウンセリングであり、仲間からサポートされていると感じる場にいることで、お互いに援助し合ったり、悩みの解決につながったりする。障害をもっても、それを乗り越えて生きようとする先輩の姿を「道しるべ」に、自らの方向性をさぐることもでき、それが、次の後輩の「道しるべ」につながっていく。自治体が把握しているピアカウンセリングサークルは多数あるが、仲間うちで自主的に行うサークルも数多く存在する。

稲川利光編:リハビリテーションビジュアルブック 第2版.学研メディカル秀潤社,東京,2016:8.より引用

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