2022年11月公開
まず、認知症とはどのような状態なのかを改めておさらいします。
認知症とは、「脳の病変によって、記憶を含む複数の認知機能(実行(遂行)機能、視覚認知など)が後天的に低下し(以前よりも低下)、社会(・家庭)生活に支障を来たすようになった(独居には手助けが必要になった)状態」1を言います(カッコ内は筆者追記)。つまり、脳の病変と認知機能障害だけで認知症と診断されるのではなく、それによって生活に支障が出た状態も含めて認知症であることを、まず理解しておきましょう。
認知症の症状は、図1のように大別できます。それぞれをもう少し具体的にみてみましょう。
認知症状(中核症状)は、認知機能障害と生活障害の2つに大別されます。
認知機能障害は、脳の病変(異常タンパクの蓄積、萎縮、血管性病変など)によって引き起こされる症状です。具体的には、注意障害、記憶障害、言語障害、視覚認知障害、実行機能障害、社会脳障害等があります。
このような認知機能障害に伴って、IADL(instrumental activities of daily living;手段的日常生活動作)・ADL(activities of daily living;日常生活動作)が低下し、生活障害につながります。例えば、車を安全に運転するためには、前方や周囲に必要な注意を向けてそれをコントロールすることが不可欠ですが、注意障害が生じているとこれらが困難となり、危険な運転につながります。また、記憶障害によって約束を忘れてしまったり、そのほかにも、金銭管理や家事ができなくなる、冷暖房の管理が難しくなるなど、生活にさまざまな支障が生じます。さらに、着脱や食事、排泄といった日常生活動作(ADL)も難しくなり、末期の認知症患者さんは寝たきりになることもあります。
認知症の行動・心理症状は、英訳の「Behavioral and psychological symptoms of dementia」から、単語の頭文字をとって、BPSDと言われます。まずは代表的な症状を以下に挙げます。
BPSDは、健常な方の大半には出現しない症状であり、“異常”という意味合いを含んでいます。また、“認知症の”とつくことからもわかるように、認知症ではない方(例えば、認知症以外の精神疾患など)に上記のような症状がみられても、それはBPSDではありません。
そのため、BPSDの判断には、まずはその方が“認知症かどうか”の確認が必要です。診断があれば確実ですが、診断がなければ認知症を疑い、専門医に相談します。
認知症に間違えられやすい疾患もありますので要注意です。特に、BPSDのような症状が急にみられた際は、「せん妄」の可能性がありますので鑑別が必要です。詳しくはこのPartの後半で解説します。
旧来の認知症の症状モデルは、中央に中核症状があり、周辺症状がそれを取り巻いている図が一般的でした。近年では、認知症状(中核症状)に加え、個人因子や環境因子が影響してBPSDが生じる形が提示されています(図2)。
文献2、p16の図を参考に作成
〈文献〉
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