Part1認知症の行動・心理症状(BPSD)
を理解する

群馬大学大学院保健学研究科 教授
内田 陽子

2022年11月公開

4.せん妄と認知症・BPSDの鑑別

BPSDとよく似た症状として、せん妄が挙げられます。まずはせん妄と認知症の違いを簡単にお示しします(表3)。

表3せん妄と認知症の区別
表3 せん妄と認知症の区別

文献1、p13 の表5より引用、一部改変

せん妄は急に発症し、治療で回復するのが特徴です。意識障害で、発症時のことを本人が覚えていないことも多いです。
せん妄発症にかかわる因子は、大きく3つに分けられます(表4)。まず、人によって、もともとせん妄になりやすい素因(準備因子)をもっている場合があります。準備因子としては、高齢であることや、脳血管性疾患、ストレスに弱い性格などが挙げられます。そして、身体疾患や薬剤等がせん妄発症の直接因子となり、そこにさらに拍車をかけてしまう要因(環境の変化などの促進因子)が加わると、せん妄が容易に発症します(図3)。

表4せん妄発症にかかわる因子
表4 せん妄発症にかかわる因子
図3せん妄発症のイメージ
図3 せん妄発症のイメージ

せん妄はBPSDとは異なり意識障害であり、BPSDとの鑑別が必要であると言われます。ただ、せん妄とBPSDを合併している患者さんも多く、臨床で看護師が鑑別することは容易ではありません。
ここで覚えておいていただきたいことは、せん妄もBPSDも、ケアの原則は同じだということです。①身体をみる、②薬剤の調整、③環境整備、④接し方への配慮、これがケアの原則です。せん妄かBPSDか迷った場合でも、これらを意識したケアを実行してみてください。

〈文献〉

  1. 1.内田陽子 編著:在宅と病院をつなぐ 認知症対応力アップマニュアル.照林社,東京,2020:15.
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