Part2BPSDのアセスメントの基本

群馬大学大学院保健学研究科 教授
内田 陽子

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2022年11月公開

2.認知症の方の“視点取得”を考える

(1)視点取得とは

視点取得とは、「他者の視点を積極的に考え、他者がどのように考えているかを推測する過程」1です。これを認知症ケアに置き換えると、「認知症の方の視点を積極的に考え、認知症の方がどのように考えているかを推測する過程」になります。

(2)認知症の方からはどう見える?

私たちは物体を見るときに、違うところに立っている他者と自分とでは「見える世界が違う」ことを認識しています。しかし、認知症の方は自分が見ている世界がすべてと捉え、他者の立場からどう見えるのかを推測することが苦手です。

例えば、次の写真をご覧ください(図2)。

図2認知症の方には財布が“見えない”
図2 認知症の方には財布が“見えない”

私たちは、「帽子の下に財布がある」とすぐわかりますね。しかし、「財布がない!」と訴えている認知症の方の目には、財布は見えていません。この写真の場合のように、同じような色や模様の物が近くにあると、判別が困難です。また、財布よりも目立つ物が近くにあると、そちらに視線を奪われてしまい、ほかの物が見えなくなってしまいます。
また、認知症高齢者は白内障をもっていることが多く、薬袋の文字などが見えにくい状態です。ある認知症の方が薬袋を見て、「これは豆腐かい?」と言われたことがありました。

私たちは、自分から見える世界が認知症の方にも同じように見えている、と捉えるのではなく、認知症の方の立場に立ってそこからどう見えるかを、積極的に推測する必要があります。

〈文献〉

  1. 1.林智子:群馬保健学紀要 2007;28:9-18.
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