「気持ちよく出す」ことを叶える排便ケア「気持ちよく出す」ことを叶える排便ケア

看護師が行うアセスメントやケアの方法を、様々な角度から解説しています。

Part1大便・小便はからだの調子を知らせるメッセンジャー:「うんこ文化センター おまかせうんチッチ」の活動

保健学博士、保健師・助産師・看護師
コンチネンスアドバイザー
榊原千秋

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2021年8月公開

1.気持ちよく排便するための「便育」

私たちが行っている活動のうちの一つが「便育」です。みなさんは、「便育」という言葉を聞いたことがありますか? 便育は、『うんこダスマン』で有名な絵本作家の村上八千世さんが推奨されてきた活動です。大便・小便をからだの調子を知らせるメッセンジャーとしてとらえるという考え方がベースになっています。うんこは「大便」で大きな便り、おしっこは「小便」で小さな便り、トイレは「お便所」でお便り所と書きます。「大便・小便」は、からだからのメッセンジャーで、それを受け止める場所が「お便所」ということです。誰もが「もっとも」とうなずきますね。
「便育」は、リラクゼーション、睡眠、食事、運動、こころの健康、お薬など、多くの生活習慣に影響を受けていることから、「気持ちよく出すこと」は、健康づくりそのものなのです。

江戸時代に84歳まで生きた貝原益軒(かいばらえきけん、1630~1714年)は、『養生訓』のなかで、五官を五官たらしめるものとして、排泄の二便(大便、小便)と洗身(体を清潔に保つこと)が大切、と書いています。五官は目、耳、鼻、舌、皮膚のことで、視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚の五感に通じます。
食べて出すことは、私たちが生きていくうえで欠かせない営みです。栄養素を体内に取り込み、エネルギーを生み出し、老廃物を排泄する――私たちは、生涯にわたり「食べること」と「出すこと」を繰り返しています。その一方で、排尿後に「すっきりした」と感じ、気持ちよく排便したあとに「気持ちよかった」としばらく余韻を残すことは最大のプレゼントだと思っています。また排泄は、よい生活習慣や健康づくりの結果ともいえます。

私たちは、「気持ちよく排便する」ための4つの便育ポイント(排便のアセスメント、表1)を示して推奨しています。一番大切にしているのは、「ほがらかさ」で、リラクゼーションや呼吸法など、副交感神経優位なからだづくりを勧めています。
また、食べたものが便になりますから、食事内容に注目します。コロナ禍のなか、免疫力アップのために、腸活で「腸内フローラ」を元気にするという取り組みが注目されています。
便は、大腸の移動速度が速いと軟便になり、遅いと硬便となり便秘になります。
刺激性下剤は大腸に働きかけて腸の動きをよくする下剤ですが、お腹の痛みや腹部膨満を訴える方もいて調整が必要です。腸を動かすためには、下剤導入の前にツボ押しや腹部マッサージや温罨法など、セルフケアできる方法を勧めています。最後に、気持ちよく出すことができる姿勢「ロダンくん」を紹介しています。

2015年に、活動の拠点となるコミュニティスペース「ややのいえ」を開設しました。ややのいえの理念は「子どもも若者も大人も高齢者も病いや障がいを抱えても自分らしく主体的に暮らしていくことができるよう当事者の望みを真ん中にして当事者や家族を含む地域の方々と多主体多職種の医療保健福祉・教育関係者や行政や企業が協働して助け合えるしくみを創造する」です。開設から6年経った今、「とことん当事者」「人として出会う」「自分ごととして考える」「十位一体のネットワーク」の理念は、地域に広く浸透しました。

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