「気持ちよく出す」ことを叶える排便ケア「気持ちよく出す」ことを叶える排便ケア

看護師が行うアセスメントやケアの方法を、様々な角度から解説しています。

Part3正常な排便とは

保健学博士、保健師・助産師・看護師
コンチネンスアドバイザー
榊原千秋

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2021年8月公開

2.便の性状

現場では、便が出た日数を数えるのみの記録だったり、「カチカチの便」「べちゃべちゃの便」といった、主観的な表現をしていませんか?
便の性状を評価する代表的なスケールが「ブリストル便性状スケール(BSS、図1)です。BSS1・2の「硬便」やBSS6・7の「軟便」の場合は、BSSの3・4・5の「普通便」の状態に改善できるよう、ケア方法を検討し選択します。
「便の性状」をBSSできちんと記載し客観的に評価することは、適切な排便ケアへの第一歩です。

普通便の成分の80%は水分です(図2)。便を形成しているのは残りの20%で、腸内細菌、腸の脱落粘膜、食物繊維などの食物残渣からなります。硬便は水分が60%、軟便は水分が90%と便の硬さは大腸の通過時間(トランジット)による水分の吸収量が影響しています。大腸の動きが遅いと硬便になり、早いと軟便になります。

図1 ブリストル便性状スケール(BSS)

横にスクロールしてご覧いただけます。

硬便 普通便 軟便
1
コロコロ便
2
硬い便
3
やや硬い便
4
普通便
5
やや柔らかい便
6
泥状便
7
水様便

硬くてコロコロ
ウサギの糞状

ソーセージ状で硬い

表面にひび割れのある
ソーセージ状

表面がなめらかなソーセージ状
(またはとぐろを巻く)

はっきりとしたシワのある
柔らかい半固形状

境界がほぐれた不定形の
小片や泥状

水様で固形物を
含まない液体状

文献1より引用

図2 便の成分

3.排便量

1回の排便量の記載はBSSと同様に重要です。一般的には150~200gといわれていますが、便量を測ることは困難です。「気持ちよく出た」と感じるときの一般的な量は、まとめると10cm大程度かそれ以上の便が出たときです。
「多量・中量・少量」、「手のひら大」、「お茶碗大」などの表現をよく聞きますが、それでは個人の認識によって異なる想定量になります。排便量についても基準となる共通スケールを示します(図3)。

図3 排便量の基準

文献1より引用

このように、便の性状でいえば、BSS3・4・5で、便の量で「バナナ1本以上」の排便があれば理想的といえます(図4)。

図4 理想的な排便

4.便の色

次は便の色です。理想的な便の色は黄褐色ですが、胆汁の主な成分であるビリルビンに影響を受けて変わります。食べたものは十二指腸で胆汁と混ざり合って便として排出されますが、肝臓や胆嚢に炎症があると、胆汁が分泌できなくなる影響で白い便が出ます。その場合は、黄疸の有無を確認しましょう。
赤い血便の場合は、大腸や肛門から出血している可能性があります。痔だと思って放置していたら、進行した大腸がんや難病の潰瘍性大腸炎だったということもありますので、医療機関への受診を勧めます。
黒いタール便は、胃・十二指腸潰瘍など、食道や胃、十二指腸、小腸など消化器官の上部で出血している可能性があります。血液が胃酸によって酸化されて黒くなり、便に混ざって排泄されています。黒い便は、単に黒い硬便だったり、鉄剤の内服により鉄が酸化した場合もあるため、踏み込んだアセスメントが必要です。

引用文献

  1. 1.うんこ文化センター おまかせうんチッチ:気持ちよく出そう!おまかせうんチッチの排便チェック表.
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